メラトニン代謝産物であるAMKによる長期記憶形成促進作用と機序
理学研究科の寺北明久(てらきた あきひさ)教授と小柳光正(こやなぎ みつまさ)准教授らの研究グループは、魚類の松果体にある「光の波長(色)識別」と「生体リズムホルモンであるメラトニン分泌の光調節」にかかわる異なる2つの光受容タンパク質が、約3億年前に魚類の進化過程で起きた『ゲノムの二倍化』の後に分化した「双子」の関係であることを発見しました。
動物の光受容は、視覚(図Ⅰ)に関するものと、そうでないのもの=非視覚(図Ⅱ)に分類されます。今回の発見は、非視覚の光受容において、もっとも重要な分子である光受容タンパク質が遺伝子重複によって増え、進化の過程で異なる機能を獲得したことを初めて明らかにしました。ヒトを含めて動物が非視覚の光受容に関わる光受容タンパク質をたくさん持っている謎を解くカギとなる発見です。
メラトニンとは睡眠調節を司る体内時計(生体リズム)を担う脳内ホルモンの ..
方法:フェレットにメラトニン0.5mgを1日1回1年間経口投与した。4ヶ月間隔で身体検査、腹部超音波検査(副腎の測定を含む)、CBC、生化学検査、血清エストラジオール濃度、アンドロステンジオン濃度、17α-ヒドロキシプロゲステロン濃度の評価を行った。血清プロラクチン濃度とデヒドロエピアンドロステロン硫酸塩濃度は初回、2回目と最後の検査で測定し、血清コルチゾール濃度は初回と最後の検査で測定した。
結果:毎日のメラトニンの経口投与は副腎疾患のフェレットの臨床症状に非常に影響を与えた:発毛、痒みの減少、活動性と食欲の増加、外陰部や前立腺サイズの減少を含めた。12ヶ月の治療期間後に異常な大きさの副腎の平均幅は明らかに増加した。臨床症状の再発は8ヶ月の評価によって6頭のフェレットで認められた。治療前の値と比較して血清17α-ヒドロキシプロゲステロンとプロラクチン濃度は12ヶ月後にそれぞれ非常に増加と減少した。
研究成果の概要(和文):マウスをモデル動物としてメラトニンの生理学的な役割を明らかにするために、メラトニン
メラトニン(N-acetyl-5-methoxytryptamine)は脊椎動物の松果体や眼球で暗期に合成されることから、環境の明暗情報を伝達するホルモンと考えられている。メラトニンは、哺乳類においては繁殖期の決定や概日周期の同調に重要な役割を果たしているが、魚類における知見は乏しい。そこで本研究は、魚類におけるメラトニンの動態、合成・代謝機構、さらにメラトニン受容体による情報伝達系までを総合的に明らかにすることを目的としている。概要は以下の通りである。
以上,本研究においては,魚類におけるメラトニン合成の制御機構,メラトニン受容体による情報伝達機構,メラトニンの代謝系,ならびにメラトニン投与法などについて総合的に検討した。これらの結果は,魚類においてもメラトニンが,季節繁殖などの年周リズムや,遊泳活動,摂餌活動などの日周リズムの調節に重要な役割を果たしていることを強く示唆している。本研究で明らかになった結果は,魚類におけるメラトニンの生理作用をさらに詳しく解明するために重要な基礎的知見となるものと思われる。
本試験における無毒性量は、母動物に対しては 75 mg/kg/day、胚・胎
キンギョについてさらに詳しくメラトニンの日周リズムを調べたところ、血中メラトニン濃度、松果体および眼球内メラトニン含量も同様な日周リズムを示すこと、血中濃度の日周リズムは松果体に依存していること、松果体と眼球におけるメラトニン合成は互いに独立しており松果体では眼球よりも低照度の光で抑制されることが判明した。
これまでに魚類に対するメラトニン投与は数多く行われてきたが,投与時のメラトニン動態については全く報告がない。そこで,腹腔内注射と経口投与によりメラトニンをキンギョに投与し,血中メラトニン濃度の経時変化を調べた。メラトニンを体重1kgあたり1mg腹腔内注射したところ,投与後直ちに血中メラトニン濃度は上昇し,1時間後に最大値(425.9±129.9ng/ml)を示した後,徐々に減少し,24時間後には投与前とほぼ同じ値に戻った。血中メラトニンの半減期は64.2分であった。また,メラトニン含有飼料を作成し,体重1kgあたり1mg経口投与したところ,投与1時間後に最大値(1607±599pg/ml)を示した後,徐々に減少し,6時間後には投与前とほぼ同じ値に戻った。これらの結果から,メラトニンは腹腔内注射のみならず経口的に投与することも可能であり,血中メラトニン濃度も上昇することが明らかにされた。今後,メラトニンの経口投与による魚類の生理機能制御技術が開発されることが期待される。
[PDF] メラトニン 2.6.4 薬物動態試験の概要文 -1
キンギョの血中メラトニン濃度は6月、9月に高く、12月、3月に低い明瞭な季節変化を示した。このため環境条件を変えて調べたところ、血中濃度は水温の高低にかかわらず暗期に高い日周リズムを示したものの、低水温下では暗期の濃度は大きく低下することが判明した。この結果、血中メラトニン濃度は日長と水温の双方に影響を受けるものと結論された。
魚類における血中メラトニンの代謝経路の一端について明らかにするために,メラトニンの代謝器官であると予測されるキンギョの肝膵臓を用いて外因性メラトニンの代謝をin vitroで調べた。その結果,メラトニンは酵素的に6-hydroxymelatoninに代謝されることが判明した。この代謝系は生体内のメラトニン量とその作用を調節する上で重要な役割を果たしていると推察される。
の成績に対してメラトニンは明期では促進的、夜間には抑制的な影響を与えて
メラトニンは明瞭な日周リズムを示すホルモンなので,受容体の側にも日周リズムが存在するのではないかと考え,キンギョ脳内メラトニン受容体の日周リズムとその調節機構について調べた。明暗条件下では,キンギョ脳内メラトニン受容体のBmaxは明期に高く,暗期に低い,血中メラトニン濃度と負の相関を持った日周リズムを示した。この結果から,メラトニン受容体のBmaxがメラトニンによりdown regulationを受けている可能性が示唆されたので,血中メラトニン濃度の日周リズムを消失させる松果体除去と恒明条件下での飼育を行い,その影響について検討した。その結果,松果体除去,恒明条件下での飼育のいずれによっても脳内メラトニン受容体の日周リズムは消失した。また,松果体除去と恒明条件下での飼育の効果は相加的ではなかった。これらの結果から,脳内メラトニン受容体の日周リズムは血中メラトニン濃度の日周リズムにより駆動されていると結論された。
メラトニン(Melatonin)分析 ヒト/ウシ/その他実験動物等・測定対象
メラトニン受容体の分布と性状を2-[125I]iodomelatoninをリガンドとしたラジオレセプターアッセイにより調べたところ、特異的結合は脳と網膜で高く、その結合は迅速、安定、可逆的、飽和可能であることが判明した。脳内分布を調べたところ、密度は視蓋-視床>視床下部>終脳>小脳>延髄の順に高かった。この結果、メラトニン受容体は脳内の様々な神経核や網膜に存在すること、受容体の脳内分布は哺乳類とは大きく異なることが示唆された。特に視蓋に高濃度に受容体が分布することから、視覚情報の統合にメラトニンが重要な役割を果たしていることが推察された。
以前は、動物から抽出したものものが多かったようですが、最近は植物から ..
松果体(しょうかたい)から分泌されるホルモン。魚類や両生類に始まり、鳥類、齧歯(げっし)類、ヒトを含めた霊長類に至るまで多くの動物で産生され、繁殖や渡り鳥の飛来などの季節性リズムや、日々の睡眠や体温、ホルモン分泌などの概日リズム(サーカディアンリズム)の調節に関わっている。
メラトニンは体内のメラトニン受容体という部位に対して働きます。
各種ヌクレオチド類はキンギョ脳内メラトニン受容体の特異的結合を用量依存的に減少させた。その効果はGTPS>GTP>GDP>GMP=ATP>cGMPの順であった。また各種無機塩類の影響について調べたところ、MgCl2(5mM)は特異的結合を増加させたが、高濃度の各種無機塩類は特異的結合を減少させた。その効果はCaCl2>LiCl>MgCl2>NaCl>Choline chloride=KClの順であった。これらの結果から、キンギョの脳内メラトニン受容体はG蛋白質と共役していることが示された。
メラトニンは、脊椎動物に見られるホルモン。睡眠の調節に関与します。
メラトニン受容体の細胞内情報伝達系について明らかにする第一歩として,各種グアニンヌクレオチド類とカチオンを用いてG蛋白質と連関しているかどうか調べた。各種ヌクレオチド類はキンギョ脳内メラトニン受容体の特異的結合を用量依存的に減少させた。その効果はguanosine 5’-0-(3-thiotriphosphate)(GTPS)>GTP>GDP>GMP=ATP>cGMPの順であった。また,GTPS(10-6M)は,受容体からリガンドの解離を引き起こし,また,メラトニン受容体のKdを増加させ,Bmaxを減少させた。各種無機塩類の影響について調べたところ,NgCl2(5mM)は特異的結合を増加させたが,高濃度の各種無機塩類は特異的結合を用量依存的に減少させた。その効果はCaCl2>LiCl>MgCl2>NaCl>choline chloride=KClの順であった。MgCl2(5mM)の存在下ではKdは変化しなかったが,Bmaxは増加した。また,CaCl2(75mM),MgCl2(100mM),NaCl(200mM)の存在下においては,Kdは増加し,Bmaxは減少した。これらの結果から,キンギョ脳内メラトニン受容体はG蛋白質と共役していることが示された。
グが決まり、季節繁殖の動物ではメラトニンにより性腺が萎縮します。一方、メラトニンは光に
キンギョ脳内メラトニン受容体の結合部位数は明期に多く暗期に少ない日周リズムを示した。松果体除去あるいは恒明条件下での飼育によって血中メラトニン濃度の日周リズムを消失させると、受容体数の日周リズムも消失したことから、受容体数の日周リズムは血中メラトニン濃度の日周リズムによって駆動されていると結論された。
オレキシンはもともと動物実験から摂食活動に関係があるのではと考えられ ..
メラトニンの作用機序を解明するために,キンギョのメラトニン受容体の分布と性状について検討した。メラトニン受容体の体内分布を2-[125I]iodomelatoninをリガンドとしたラジオレセプターアッセイにより検討したところ,脳,網膜に高い特異的結合を,脾臓に低い特異的結合を認めた。脳,網膜における特異的結合は,迅速,安定,可逆的,飽和可能であり,メラトニンに対して高い特異性を示した。親和性(Kd),結合部位数(Bmax)はそれぞれ,脳では27.2±1.4pM,10.99±0.36fmol/mg protein(n=6),網膜では61.9±5.7pM,6.52±0.79fmol/mg protein(n=9)であり,生理的なメラトニン受容体であると判定された。細胞内分布を調べたところ,脳では粗マイクロソーム分画(P3)>粗ミトコンドリア分画(P2)>粗核分画(P1),網膜ではP2>P3>P1の順であった。脳内分布を調べたところ,密度は視蓋-視床>視床下部>終脳>小脳>延髄の順であった。これらの結果から,メラトニンは脳内の様々な神経核や網膜に存在するメラトニン受容体に結合して作用している可能性が示唆された。特に視蓋に高密度にメラトニン受容体が分布することから,視覚情報の統合にメラトニンが重要な役割を果たしていると推察される。
[PDF] 動物取扱業における 犬猫の飼養管理基準の解釈と運用指針(案)
メラトニンの生理作用の解明にはメラトニンの投与が必須である。これまで魚類に対してメラトニン投与は数多く行われてきたが、投与後のメラトニンの動態については全く知見がない。そこで腹腔内注射と経口投与(いずれも 1mg/体重1kg)によりメラトニンをキンギョに投与し、血中メラトニン濃度の経時変化を調べところ、いずれの方法でも血中メラトニン濃度の日周リズムを再現できることが判明した。
動物であり、年3回程度の出産が可能である。地域によるが、例えば東京で自然光だけで飼育すると
以上、本論文は、魚類におけるメラトニンの日周リズム、合成・代謝機構、受容体による情報伝達機構ならびに投与方法などについて総合的に明らかにしたもので、学術上、応用上寄与するところが大きい。よって審査委員一同は、本論文が博士(農学)の学位論文として価値あるものと認めた。
メラトニンは、松果体から分泌されるホルモンで、受容体MT1及びMT2 ..
キンギョにおけるメラトニンリズムが生物時計による調節を受けているか否かを明らかにするため,恒常条件下でサーカディアンリズム(周期が約24時間の自由継続リズム)を示すかどうか調べた。キンギョにおける血中メラトニン濃度は,恒暗条件下では3日間サーカディアンリズムを示し,明暗条件下の暗期に相当する時刻に高い値を,明期に相当する時刻に低い値を示した。一方,眼球内メラトニン含量は2日間はサーカディアンリズムを示したが,3日目にはリズムは失われた。恒明条件下においては,血中メラトニン濃度は低い値を保ち,変化を示さなかったが,眼球内メラトニン含量は,恒暗条件下に比べて振幅は小さかったものの,サーカディアンリズムを示した。次に松果体の灌流培養を行ったところ,明暗条件下,および逆転した明暗条件下では,メラトニン分泌は暗期に高く,明期に低い日周リズムを示した。恒暗条件下では,周期が23.6ないし24.9時間のサーカディアンリズムを示したが,恒明条件下ではメラトニン分泌は抑制され,リズムは失われた。最後に培養時刻と光条件がキンギョ眼杯標本からのメラトニン分泌量と眼杯におけるメラトニン含量におよぼす影響を検討したところ,明期(1130hr)に眼杯標本を作成し,1200-1500hrの間培養した場合には,メラトニン放出量,メラトニン含量ともに明条件群と暗条件群の間に差は認められなかった。暗期に入る直前(1730hr)に眼杯標本を作成し,1800-2100hrの間培養した場合には,メラトニン放出量,メラトニン含量ともに,暗条件群のほうが明条件群よりも高い値を示した。また,これらの実験の明条件群,暗条件群それぞれにおいて,1800-2100hr培養群の方が,1200-1500hr培養群よりも高い値を示し,培養時刻が眼杯におけるメラトニン産生に影響をおよぼすことが判明した。これらの結果から,キンギョにおけるメラトニンリズムは環境要因のみならず内因性の生物時計による制御も受けていることが明らかになった。
メラトニンは、以下の研究において、実験動物に投与されています:
私たち日本人は古来より季節の変化を敏感に感じとり,四季を生活に取り入れ,その変化を楽しんできた.春,夏,秋,冬とはっきりした四季が繰り返される地域では,季節に応じて旬の山菜や魚介類を取り入れた料理を楽しんだり,お花見や花火大会といったように季節に密着した行事がある.また,桜,梅,鶯といえば春,稲刈りや松茸,秋刀魚といえば秋といったように,日本語には季語が存在する.このように,われわれ日本人は季節の変化を愛でる国民であるが,多くの動物にとって季節の環境変化は,生命の危機を及ぼしうる重大な変化といえる.動物は繁殖,渡り,冬眠,換羽など,その環境変化にあった行動や生理機能を調節することで適応している.人間は,カレンダーや新聞を見ることで現在の暦を把握することができるが,それらをもたない動物はどのように季節の変化を感知し,これから起きる変化を予測しているのだろうか?