ナーガ(コブラ)は、どちらかというと辰向きなんですが……(インドではコブラと普通の蛇は区別されている)


今回のお話をはじめ、世界中の宗教で悪い存在として描かれることの多い蛇ですが、実は仏教を守護する「那伽(ナーガ)」という蛇の神がいます。
もともとはインド神話に登場するコブラをモチーフにした神でしたが、仏教に取り入れられ、お釈迦さまがさとりをひらくときにそれを守ったとの逸話が経典に書かれるほか、仏教を守護する四天王の一人である広目天の眷属とされることもあります。
古い経典では、インドコブラを思わせる容姿で描かれますが、地域によっては一般的な蛇の姿や、写真のように複数の頭を持つ姿で描写されることもあります。
コブラの存在しない中国にお経が伝わると、「龍」「龍王」と訳され、中国における龍信仰と結びつき、日本でも同様に描かれています。
天気を制御する力を持ち、怒ると干ばつに、なだめられると雨を降らすといわれています。


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昔、インドにバーラーナシーという国がありました。その国に黄金をこよなく愛する一人の男がいました。仕事があればどこへでも出かけていき、毎日せっせと働きました。男はそうして働いて得た収入で黄金を買っては、かめに収めていました。やがてかめが黄金で一杯になると、庭に穴を掘ってそれを地中に埋めておきました。男はかめに黄金を満たすことだけを楽しみにして昼夜を問わず働き、ついにそのかめも七つになりました。
ところが長年の無理がたたって男は病気になり、あえなく死んでしまいました。黄金に執着し続けていた男は死ぬとすぐに毒ヘビに生まれ変わり、かつて埋めたかめに巻きついたのでした。
やがて住む人もいなくなったその家は、すっかり朽ち果てて崩れ去ってしまいました。黄金のかめに取りついていたヘビも間もなく死んでしまいましたが、何度生まれ変わってもヘビとしてしか生まれ変わることができませんでした。
こうして永い年月が流れ、ようやく毒ヘビは、自分がヘビの姿から抜け出すことができないのは黄金に執着しすぎるからだということを悟り、黄金を修行者に施そうと考えました。
毒ヘビは道端の草むらに身を隠して通りがかりの人を待つと、しばらくして一人の男が通りかかったので、男に声をかけました。
「話があるのでこっちまできてくれないか」
「お前さんは見たところ毒ヘビだな。私をおびき寄せて襲うつもりだな」
するとヘビは荒々しく言いました。
「私がもしその気なら、こっちに来なくてもかみ殺すぐらいわけないことだ。さあ、言うとおりにするのだ」
逆らえばただではすまないという気配に、男は少しずつヘビに近づき、すぐそばまで来ると、ヘビは言葉を続けました。
「ここには黄金を収めたかめが埋めてある。それを私に代わって修行者に施してもらいたいのだ。嫌ならそれなりの覚悟をしてもらわねばならん」
男は命を奪われてはかなわないのでヘビの言うとおりにすることを約束しました。そこでヘビは男にかめを掘り出させ、言いました。
「この黄金で修行者たちに供養をしてもらいたい。そしてその当日、かごを持ってきて私をその場所まで運んでほしいのだ」
男は早速近くの修行場を訪ね願い出ました。申し出は修行者たちに受け入れられ、やがて供養の日になりました。男が約束どおりかごを持ってヘビの住処に行くと、ヘビはたいそう喜んでかごの中に入り、男はかごを抱えて修行場に向かいました。
その道中、男は通りすがりの人が男をねぎらって挨拶してきたのにも関わらず、素知らぬ顔をして通り過ぎてしまいました。
ヘビは男の無作法に腹を立ててかみついてやろうかと考えましたが、心を静めてかごから這い出し、見知らぬ人であろうと身分の低い者であろうと等しく慈悲の心を持って接しなければならないことを男に説き聴かせ、先程の驕った態度を戒めました。諭された男は自分の行いを恥じ、二度とこのようなことはしないと誓いました。
やがて修行場につき、食事が始められました。ヘビは敬いの心を持ってそれを眺めていました。
食事が終わってから、修行者たちはヘビのために法を説きました。ヘビはそのありがたさに感激して修行者の一人をかめの埋めてある場所へと案内し、残りの黄金をすべて施しました。
こうしてヘビは、修行者に施しをした功徳で死後は天界に生まれ変わることができたといいます。

このように、世界の創造に関わるナーガや、世界を支えるナーガのようなものもいれば、タクシャカのように人間界で活躍するナーガもいる。タクシャカなんかは虫に変身したり、乞食に変身したりと変幻自在である。『マハーバーラタ』のようなインドの物語には、ほかにもたくさんのナーガたちが登場する。古代インド人にとって、ナーガは身近な存在だったのだろう。

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タクシャカもナーガの王として非常に有名で、さまざまな物語に登場する。あるとき、クル族の王パリークシットは森の中で「無言の行」を行っている修行中の聖者と出会う。聖者が質問に何も返事をしないことに腹を立てた王は聖者の首に死んだ蛇を巻きつけて帰った。聖者の息子がこの事実を知り、パリークシット王に「七日以内にタクシャカの毒で死ぬ」という呪いをかけた。パリークシット王はそれを知ると、急いで湖の真ん中に宮殿をつくらせ、宮殿に閉じこもって呪いをやり過ごそうとした。けれど、タクシャカは虫に化けて果物の中に潜り込み、まんまと宮殿に入り込んだ。タクシャカは巨大な赤蛇に変身して王に襲い掛かり、咆哮をあげ、王に噛みついた。王は即死し、宮殿は炎上。タクシャカは真っ赤な一条の帯になって天空へと昇っていったという。

シェーシャもアナンタ同様、1000の頭を持つナーガの王だ。ヒンドゥー教の考える7層の地下界のさらに下にいて、1000の頭で世界を支えているという。シェーシャがあくびをすると、地震が起こる。

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「乳海攪拌」と呼ばれる神話にはヴァースキという名前のナーガの王が登場する。神々は不死の飲料を手に入れようとする。そこでマンダラ山を引き抜いて巨大な亀(アクーパーラ)の背中に突き立てると、ヴァースキをぐるぐるとマンダラ山の回りに巻いた。そして一方を神々が、もう一方をアスラたちが引っ張った。こうして神々は海をかき混ぜてアムリタを手に入れる。つまり、ヴァースキはかき混ぜ棒の綱の役割を果たしたわけだ。

ヒンドゥー教の神話では、ヴィシュヌ神が世界の創造をする。宇宙ができる前、ヴィシュヌはアナンタと呼ばれるナーガの上に横になって眠っていた。こうしてヴィシュヌが瞑想することで世界は創造されたのだ。このアナンタは1000の頭を持つナーガの王で、アナンタはヴィシュヌ神の上に頭を翳して、彼の日避けの役割もしたという。

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また、大乗仏教の体系を築いたとされる歴史上のインドの僧侶ナーガールジュナ(龍樹)に関する伝説にもナーガは登場する。彼に関しては後世の資料から推察するしかないのだが、ある伝説によると、マハーナーガ(大龍菩薩)というナーガが彼をナーガの王国に連れて行ったという。そこでナーガールジュナは大乗経典を授けられたという。これは以前、ガウタマ・シッダールタ(釈迦)がナーガたちに、人間の側に受け入れる準備が整うまで預けていたものだったという。

ヒンドゥー教のナーガ、そしてナーガラージャはその後、仏教の世界にも取り込まれ、仏典の見張りをする水の神となった。中国などでは「龍」「龍王」と訳される。有名な八大龍王なども、もともとはヒンドゥー教のナーガに起源を持っていて、ヴァースキ(和修吉)、タクシャカ(徳叉迦)などのナーガがそのまま仏教神話にも登場している。特に龍王の1人、ムチャリンダは瞑想に耽る釈迦を大嵐から守ったという。ムチャリンダはとぐろを巻いて釈迦を包み、頭を広げて雨避けになったのである。


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現在では、ナーガといえば上半身が人間、下半身が蛇の姿をした半人半蛇の一族をイメージする人が多いかもしれないが、古代インドでは鎌首を持ち上げた単なるコブラの姿として想像されることも多く、いくつも頭を持つものも多数、彫刻などに残されている。

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ナーガはインドにおける「蛇」、より正確に言えば「コブラ」のことだ。コブラといえばするすると地面を這って移動し、その毒であっという間に人間を死に至らせる。シッポを切られても再生する。おそらく、インドにやってきたアーリア人たちにとって、脅威の存在の1つだったに違いない。コブラの脱皮も、彼らにとっては驚異だっただろう。古い皮を脱ぎ捨てて、若々しい姿で生まれ変わるコブラはすぐに神聖視され、古代インド人たちの「生命力」の象徴となった。コブラは冬になると姿を消すが、再び、春になって暖かくなるとどこからともなく現れる。同様にナーガも春には天に昇り、冬には大地深くに潜むと考えられ、やがて豊饒と結びついて崇拝されるようになっていった。やがてナーガは天候とも結び付けられるようになった。ナーガの王たちは雨を自由自在に降らせ、川や湖、海を守っているとも考えられた。このように、ナーガはインド人たちにとって、蛇の精霊、あるいは蛇神のような存在となっていった。

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インド神話で上半身が人間、下半身が蛇の半神。地下界に棲む。悪魔的なものも、神もいる。各部族の王はナーガラージャと呼ばれる。

Nāga had played a role ofprosperity and fertility of the land

ナギニーは、インド神話において水と豊饒の神とされている。姿は人の顔をしていて、体は蛇の尾とコブラの首を持っている。ナーガ(仏教では竜王)は男神を表し、ナギニーは女神を表す。微笑む女神の表情が親しみを感じる作品である。

Kirby, cobra, Naga / 明けましておめでとう(アイアンナーガ)

ヒンドゥー教の宇宙観では、世界には7層の地下界があるという。この地下界の各層に、たくさんのナーガたちが棲んでいる。まさに蛇族、あるいは龍族といったイメージで、もちろん、悪魔的なものもいれば、神として崇拝されるものまでさまざまのナーガがいた。中には人間と結婚するものまでいたという。多くの部族があって、ナーガの王を意味するナーガラージャと呼ばれる王も多数、輩出している。