た患者が登録された。全患者は,バリシチニブ(14日以下),レムデシビル(10日以下),デキサメタゾン(10日以下).


ニュースなどで多くの方がご存じかと思いますが、たとえ新型コロナウイルス感染症を発病しても、ほとんどの患者さんは風邪のような症状をへて軽症のまま治ってしまいます。
しかし、一部の患者さんでは重症化して酸素吸入が必要になったり、更に悪化して人工呼吸器やECMOで生命を維持する治療が必要になったり、最悪の場合亡くなってしまったりします。
このような重症化が起こるメカニズムとしては、ウイルスの感染をきっかけに免疫システムが、いわゆる「サイトカイン・ストーム」を起こし、制御不能な炎症が肺を始めとした臓器に生じてしまうという説が有力です。
このため、新型コロナウイルス感染症の治療としては、①発症早期にはウイルスの増殖を抑える抗ウイルス薬を、②サイトカイン・ストームで重症化した場合には炎症を制御する薬剤を、という二段構えの戦略が必要になります。
新型コロナウイルス感染症に対する治療薬として国内承認された薬剤のうち、昨年5月に承認されたレムデシビル(ベクルリー®)は①の働きを持つ薬であり、昨年7月に承認されたデキサメタゾンは②の働きを持つ薬剤でした。
今回国内承認されたバリシチニブ(オルミエント ®)は②の働きを持つ薬剤ですが、デキサメタゾンと比較してどちらが有効性・安全性で優れているかは今の所わかっていません。
米国の疾病対策予防センター(CDC)のガイドラインでは、②の薬剤としてはデキサメタゾンを優先し、副作用の問題(高血糖など)でステロイドホルモンが使用できない症例では、バリシチニブの投与を検討するように記載されているようです。
一方、日本国内では、昨年末あたりからバリシチニブの保険適応外での使用が認められ、重症のコロナウイルス感染症の患者さんに投与が開始されていましたが、
①肺炎の陰影がCTスキャンで確認され、酸素飽和度が低下し始めるとレムデシビルの投与を開始
②悪化して酸素吸入が必要な状態になると、レムデシビルにデキサメタゾンを追加
③デキサメタゾン投与でもさらに悪化すると、上記2剤にバリシチニブを追加
という形で、デキサメタゾンとバリシチニブのどちらかを選択するというよりは、両剤を併用する医療機関が多いようです。
どちらが治療戦略として最適なのか、明らかになるにはしばらく時間が必要かもしれません。
近々改定されるであろう、厚生労働省の「COVID-19診療の手引き」では、本剤がどのような位置づけで記載されるのか興味があるところです。
第4波の到来による医療機関の逼迫が毎日のように報道されている今日このごろですが、バリシチニブの正式承認によって、投与する医療機関が増加→重症患者のICU滞在日数が短縮→重症病床の逼迫状態が改善、という流れが多少なりとも生じることを期待したいと思います。


。それぞれどんな特徴があるのか。 □レムデシビル、幅広く使用 デキサメタゾン、飲むタイプも バリシチニブ、もとは関節リウマチ薬…

バリシチニブ(Baricitinib)は、関節リウマチに対する治療薬として、2017年よりオルミエント ®という名前で日本国内でも市販されていた飲み薬です。
体内で炎症が起こると、サイトカインという細胞間の情報伝達を行うタンパク質がリンパ球などから放出され、これが様々な細胞の表面にある受容体というタンパク質に結合することで、細胞の中に炎症のシグナルが伝わります。
バリシチニブは、受容体から細胞の中に信号を伝える際に必要な、ヤヌスキナーゼ(JAK)という酵素を阻害することで、サイトカインによって細胞で炎症が起こることを抑える働きを持っています。
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)を重症化させる、いわゆるサイトカイン・ストームに対して有効な薬剤として、米国では昨年11月より抗ウイルス薬レムデシビルとの併用治療が緊急使用許可されていました。
日本では、イーライ・リリー社によって昨年12月にCOVID-19の治療薬として承認申請が行われ、4月21日の厚生労働省の審議会で承認されました。
COVID-19の治療薬としては、レムデシビル、デキサメタゾンに続く3剤目となります。
今回は、承認の決め手となったと思われる、国際二重盲検試験(ACTT-2)の成績を報告した論文を読み解いてみたいと思います。
論文が掲載されたのは、The NEW ENGLAND JOURNAL OF MEDICINE 誌の2020年12月11日号です。

原文(英語)や図表は、下のリンクからお読みいただけます
Baricitinib plus Remdesivir for Hospitalized Adults with Covid-19

4/25 追記
米国で進行中だったレムデシビル+デキサメタゾン療法とレムデシビル+バリシチニブ療法の比較試験(ACTT-4)が、有効性において有意差が出ない見込みのために新規の症例登録を中止したとの報道がありました。炎症を抑制する薬剤としては、病態に応じてデキサメタゾンとバリシチニブのどちらかを使えば良いと思われます。
(両方使用するとさらなる有効性が期待できるかは、追加で検討が必要と思われます。)

承認されれば、新型コロナウイルスの治療薬としては、レムデシビルとデキサメタゾン、それにバリシチニブに続いて4例目となります。 目次に戻る

日本感染症学会(理事長:舘田 一博氏[東邦大学医学部教授])は、2月1日に新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の治療薬について指針として「」をまとめ、同会のホームページで公開した。

本指針は、COVID-19の流行から約1年が経過し、薬物治療に関する知見が集積しつつあり、これまでの知見に基づき国内での薬物治療に関する考え方を示すことを目的に作成されている。

現在わが国でCOVID-19に対して適応のある薬剤はレムデシビルである。デキサメタゾンは重症感染症に関しての適応がある。また、使用に際し指針では、「適応のある薬剤以外で、国内ですでに薬事承認されている薬剤をやむなく使用する場合には、各施設の薬剤適応外使用に関する指針に則り、必要な手続きを行う事とする。適応外使用にあたっては基本的にcompassionate useであることから、リスクと便益を熟慮して投与の判断を行う。また、治験・臨床研究の枠組みの中にて薬剤を使用する場合には、関連する法律・指針などに準じた手続きを行う。有害事象の有無をみるために採血などで評価を行う」と注意を喚起している。

抗ウイルス薬などの対象と開始のタイミングについては、「発症後数日はウイルス増殖が、そして発症後7日前後からは宿主免疫による炎症反応が主病態であると考えられ、発症早期には抗ウイルス薬、そして徐々に悪化のみられる発症7日前後以降の中等症・重症の病態では抗炎症薬の投与が重要となる」としている。

抗ウイルス薬などの選択について、本指針では、抗ウイルス薬、抗体治療、免疫調整薬・免疫抑制薬、その他として分類し、「機序、海外での臨床報告、日本での臨床報告、投与方法(用法・用量)、投与時の注意点」について詳述している。

〔抗ウイルス薬〕
・レムデシビル(商品名:ベクルリー点滴静注液100mgなど)
・ファビピラビル
〔抗体治療〕
・回復者血漿
・高度免疫グロブリン製剤
・モノクローナル抗体
〔免疫調整薬・免疫抑制薬〕
・デキサメタゾン
・バリシチニブ
・トシリズマブ
・サリルマブ
・シクレソニド
〔COVID-19に対する他の抗ウイルス薬(今後知見が待たれる薬剤)〕
インターフェロン、カモスタット、ナファモスタット、インターフェロンβ、イベルメクチン、フルボキサミン、コルヒチン、ビタミンD、亜鉛、ファモチジン、HCV治療薬(ソフォスブビル、ダクラタスビル)

・レムデシビルのRCTを表化して整理
・レムデシビルの添付文書改訂のため肝機能・腎機能を「定期的に測定」に変更
(抗体治療薬の項目追加)
・バリシチニブ+レムデシビルのRCT結果を追加
・トシリズマブのREMAP-CAP試験などの結果を追加
・シクレソニドの使用非推奨を追加

レムデシビル、デキサメタゾンもしくはバリシチニブの継続使用の推奨、また

国内で既に承認されている「レムデシビル」、「デキサメタゾン」に次いで3つ目の治療薬となりました。 「バリシチニブ ..