ARDSへの早期デキサメタゾン投与で死亡率低下:DEXA-ARDS試験



【著者の結論】
中等度から重症のARDS 患者に対して、早期にデキサメタゾンを投与することで、人工呼吸器の離脱期間を早め、全死亡率を減らす可能性がある。


ARDSを伴うCOVID-19、デキサメタゾンが有効な可能性/JAMA

【Implication】
本研究では中等症〜重症のARDSに対してデキサメタゾンの有効性が示された。
大規模RCTで、最新のARDS治療を取り入れデキサメタゾンを初めて用いたことは評価できるが、研究デザインを考慮すると効果の期待できる適応症例は限られる。また死亡率はSecondary outcomeであり、今後の追試での評価が期待される。
当院ICUではさらなる追試を待って導入を検討する。

筋弛緩薬、鎮静、腹臥位、リクルートメント手技は担当医の判断で施行

常に抜管できないかARDS net protocolのSBTに基づいて評価し、満たしたら特に理由がない限りすぐに抜管を試みた。

ARDSに対するデキサメタゾンの効果 | 呼吸器ドクターNのブログ

Doi: 10.1016/S2213-2600(19)30417-5.

スペインの他施設ICUでのRCTです。
Limitationにもありますが、Studyです。
基礎にやがあったり、いたり、があると除外されています。
また、が対象ですので、注意が必要です。

意訳している部分が多いので、間違いがありましたらご指摘ください。
Introduction
・ARDSの推奨治療

Methods
・スペインでの他施設のRCT(17 ICUs)
- 18歳以上
- 挿管・人工呼吸管理
●胸部画像で両肺に浸潤影
●心不全が無い・肺動脈楔入圧<18 mm Hg
●低酸素血症:PEEP≧5cmH2OでPaO2/FiO2≦200
- 妊婦・授乳中
- 脳死
- 基礎疾患の終末期
- DNARの患者
- ステロイド・免疫抑制剤使用中
- 他の臨床試験がなされている
- 重症の肺疾患が基礎にある(COPDなど)
- うっ血性心不全

・ARDS発症日の定義
- 患者が最初にmoderate-to-severe ARDSの基準を満たした日


I: 従来の治療に加えデキサメタゾンを投与した群
C: 従来の治療群
O: 人工呼吸器離脱期間

[PDF] ARDSに対するデキサメタゾンを用いた治療のRCT

ARDSに対するコルチコステロイドの効果は議論がある。
我々は肺および全身炎症を変化させ、機械的人工呼吸の期間、死亡を減少させるかもしれない

中等症~重症の急性呼吸促迫症候群(ARDS)を伴う新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の患者の治療において、標準治療にデキサメタゾンを併用すると、標準治療単独と比較して、治療開始から28日までの人工呼吸器非装着日数(患者が生存し、かつ機械的換気が不要であった日数)が増加することが、ブラジル・Hospital Sirio-LibanesのBruno M. Tomazini氏らCOALITION COVID-19 Brazil III Investigatorsが実施した「CoDEX試験」で示された。研究の成果はJAMA誌オンライン版2020年9月2日号に掲載された。COVID-19に起因するARDSは、実質的に死亡率や医療資源の使用を増大させることが知られている。デキサメタゾンは、ARDSを伴うCOVID-19患者の肺障害を軽減する可能性が示唆されている。

本研究は、ブラジルの41の集中治療室(ICU)が参加した医師主導の非盲検無作為化試験であり、2020年4月17日~6月23日の期間に患者登録が行われた(Coalition COVID-19 Brazilの助成による)。最終フォローアップ日は2020年7月21日だった。予定された登録患者数350例に達する前に、関連試験の論文が発表され、本試験は早期中止となった。

対象は、年齢18歳以上のCOVID-19確定例または疑い例で、PaO/FIO比≦200の中等症~重症ARDSの基準を満たし、48時間以内に機械的換気を受けていた患者であった。ARDSの診断はベルリン定義の基準に準拠した。

被験者は、標準治療に加え、デキサメタゾン10mgまたは20mgを1日1回、5日間あるいはICUを退室するまで静脈内投与する群、または標準治療のみを受ける群に無作為に割り付けられた。

主要アウトカムは、治療開始から28日間における人工呼吸器非装着日数とし、患者が生存かつ機械的換気が不要であった日数と定義された。副次アウトカムは、15日の時点での6段階順序尺度(1[非入院]~6[死亡]点)による臨床状態、48時間・72時間・7日の時点でのSequential Organ Failure Assessment(SOFA)スコア(0~24点、点数が高いほど臓器機能不全が高度)などであった。

299例(平均年齢61[SD 14]歳、女性37%)が登録され、全例がフォローアップを完了した。

治療開始から28日の時点における平均人工呼吸器非装着日数は、デキサメタゾン併用群が6.6日(95%信頼区間[CI]:5.0~8.2)と、標準治療単独群の4.0日(2.9~5.4)に比べ有意に増加した(群間差:2.26、0.2~4.38、p=0.04)。

また、7日時点のSOFA平均スコアは、デキサメタゾン併用群は6.1点(95%CI:5.5~6.7)であり、標準治療単独群の7.5点(6.9~8.1)と比較して有意に低かった(群間差:-1.16点、95%CI:-1.94~-0.38、p=0.004)。48時間時点と72時間時点のSOFA平均スコアについては、両群間に有意な差はなかった。

15日の時点での6段階順序尺度による臨床状態、28日の時点での全死因死亡・ICU非滞在日数・機械的換気日数には、両群間に有意差はみられなかった。

デキサメタゾンの併用による有害事象の有意な増加は認められなかった。重篤な有害事象は、デキサメタゾン併用群5例(3.3%)、標準治療単独群9例(6.1%)でみられた。28日までに新規に診断された感染症は、デキサメタゾン併用群33例(21.9%)、標準治療単独群43例(29.1%)、人工呼吸器関連肺炎はそれぞれ19例(12.6%)および29例(19.6%)、カテーテル関連血流感染症は10例(6.6%)および8例(5.4%)で発現した。

著者は、「治療開始から28日間における人工呼吸器非装着日数は、既報の非COVID-19のARDS患者に比べ低かったが、疾患重症度が確定されたARDSを伴うCOVID-19患者を対象とした以前の研究の結果と一致していた」としている。

急性呼吸窮迫症候群(ARDS) -原因、症状、診断、および治療については、MSDマニュアル-家庭版のこちらをご覧ください。

【仮説/目的】
中等症から重症のARDS患者にデキサメタゾンを早期投与すると、人工呼吸期間と全死亡率を減らす。

に対する多施設ランダム化コントロール試験を行った。
脳死、終末期、ステロイドや免疫抑制剤を使用している患者は除外した。
登録可能患者はランダムに、治療でバランスをとってただちにデキサメタゾン投与か通常の集中治療を受けるかに割り付けられた。
デキサメタゾン群はday1からday5までデキサメタゾン20mgを1日1回静注投与され、day6からday10までは10mg/日に減量された。
両群とも肺保護機械的人工呼吸で換気された。


重症COVID-19へのステロイドはDX?mPSL?集中治療医に聞く

中等症以上のARDSにおいて早期から少量のデキサメタゾンを投与することで、人工呼吸器の日数、死亡率が改善したようです。
ARDSに対するステロイドの効果についてはまだ評価がさだまらないところです。