アセトアミノフェン · クラリスロマイシン · セフジニル · リファンピシン · レボフロキサシン水和物.
(禁忌)
2.1.房室ブロック、洞房ブロックのある患者[刺激伝導系を抑制し、これらを悪化させることがある]。2.2.ジギタリス中毒の患者[中毒症状が悪化する]。
2.3.閉塞性心筋疾患(特発性肥大性大動脈弁下狭窄等)のある患者[心筋収縮力を増強し、左室流出路の閉塞を悪化させることがある]。2.4.本剤の成分又はジギタリス剤に対し過敏症の既往歴のある患者。
(重要な基本的注意)8.1.本剤を投与する場合には観察を十分に行い、過去2~3週間以内にジギタリス剤又はその他の強心配糖体が投与されているか否かを確認したのち、慎重に投与量を決定すること。
8.2.本剤の至適投与量は患者により個人差があるので、少量から投与を開始し、観察を十分に行い投与量を調節すること。8.3.ジギタリス中毒症状(悪心・嘔吐、不整脈等)があらわれることがあるので、消化器・神経系自覚症状、心電図、血中濃度測定等必要に応じ観察するとともに腎機能、血清電解質(カリウム、マグネシウム、カルシウム)、甲状腺機能等の誘因に注意すること〔9.1.3、9.1.5、9.1.6、9.2.1、9.2.2、10.2、11.1.1、13.1参照〕。
8.4.本剤は種々の薬剤との相互作用が報告されているが、可能性のあるすべての組み合わせについて検討されているわけではないので、他剤と併用したり、本剤又は他剤を休薬する場合はメチルジゴキシン及びジゴキシン合計の血中濃度の推移、自覚症状、心電図等に注意し、慎重に投与すること〔10.2参照〕。(特定の背景を有する患者に関する注意)
(合併症・既往歴等のある患者)9.1.1.急性心筋梗塞のある患者:心筋収縮力増強により心筋虚血を悪化させるおそれがある。
9.1.2.心室性期外収縮のある患者:中毒が発現した場合、鑑別ができないおそれがある。9.1.3.心膜炎、肺性心のある患者:少量で中毒を起こすおそれがある〔8.3、11.1.1参照〕。
9.1.4.WPW症候群のある患者:副伝導路の伝導速度を速め、不整脈が悪化するおそれがある。9.1.5.電解質異常(低カリウム血症、高カルシウム血症、低マグネシウム血症等)のある患者:少量で中毒を起こすおそれがある〔8.3、11.1.1参照〕。
9.1.6.甲状腺機能低下症のある患者:メチルジゴキシン及びジゴキシン合計の血中濃度が高くなり、作用が増強し、中毒を起こすおそれがある〔8.3、11.1.1参照〕。9.1.7.甲状腺機能亢進症のある患者:メチルジゴキシン及びジゴキシン合計の血中濃度が低くなり、作用が減弱し、大量投与を要することがある。
(腎機能障害患者)9.2.1.腎疾患のある患者:メチルジゴキシン及びジゴキシンの排泄が遅延し、中毒を起こすおそれがある〔8.3、11.1.1参照〕。
9.2.2.血液透析を受けている患者:メチルジゴキシン及びジゴキシンの排泄が遅延し、また、透析により、血清カリウム値が低下する可能性があるため、中毒を起こすおそれがある〔8.3、11.1.1参照〕。(妊婦)
妊婦又は妊娠している可能性のある女性には、治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ投与すること。(授乳婦)
治療上の有益性及び母乳栄養の有益性を考慮し、授乳の継続又は中止を検討すること。(小児等)
少量から投与を開始し、血中濃度や心電図等を監視するなど、観察を十分に行い、慎重に投与すること(ジギタリス中毒があらわれやすい)〔11.1.1参照〕。(高齢者)
少量から投与を開始し、血中濃度等を監視するなど、観察を十分に行い、慎重に投与すること(ジギタリス中毒があらわれやすい)〔11.1.1参照〕。(相互作用)
メチルジゴキシン及びジゴキシンはP糖蛋白質の基質であるため、メチルジゴキシン及びジゴキシン合計の血中濃度はP糖蛋白質に影響を及ぼす薬剤により影響を受けると考えられる。10.2.併用注意:
1).カルシウム(注射剤)(カルシウム値の補正に用いる場合を除く)(グルコン酸カルシウム水和物<注射剤>、塩化カルシウム水和物<注射剤>)〔8.3、8.4、13.2.1-13.2.5参照〕[静注により急激に血中カルシウム濃度が上昇するとジゴキシン毒性が急激に出現することがあるので、治療上やむを得ないと判断される場合を除き、投与しないこと、急激にカルシウム濃度を上昇させるような使用法は避けること(本剤の催不整脈作用は心筋細胞内カルシウム濃度に依存すると考えられている)]。2).スキサメトニウム塩化物水和物〔8.3、8.4、13.2.1-13.2.5参照〕[併用により重篤な不整脈を起こすおそれがあるので、治療上やむを得ないと判断される場合を除き、投与しないこと(スキサメトニウム塩化物水和物の血中カリウム増加作用又はカテコールアミン放出が原因と考えられている)]。
3).カルシウム<経口剤>、カルシウム含有製剤<カルシウム注射剤を除く>(カルシウム含有高カロリー輸液等)〔8.3、8.4、13.2.1-13.2.5参照〕[本剤の作用を増強することがあり、ジギタリス中毒の症状<悪心・嘔吐・不整脈等>があらわれることがある(これらの薬剤により血中カルシウム値が上昇するためと考えられている)]。4).解熱・鎮痛・消炎剤(インドメタシン、ジクロフェナクナトリウム等)〔8.3、8.4、13.2.1-13.2.5参照〕[本剤の作用を増強することがあり、ジギタリス中毒の症状<悪心・嘔吐・不整脈等>があらわれることがある(メチルジゴキシン及びジゴキシンの腎排泄が抑制され、血中濃度が上昇するとの報告がある)]。
5).トラゾドン塩酸塩〔8.3、8.4、13.2.1-13.2.5参照〕[本剤の作用を増強することがあり、ジギタリス中毒の症状<悪心・嘔吐・不整脈等>があらわれることがある(機序は不明であるが、メチルジゴキシン及びジゴキシン合計の血中濃度が上昇するとの報告がある)]。6).抗コリン剤(アトロピン系薬剤、プロパンテリン等)〔8.3、8.4、13.2.1-13.2.5参照〕[本剤の作用を増強することがあり、ジギタリス中毒の症状<悪心・嘔吐・不整脈等>があらわれることがある(腸管運動を抑制し滞留時間が延長されるため、メチルジゴキシンの吸収が増大し、メチルジゴキシン及びジゴキシン合計の血中濃度が上昇するとの報告がある)]。
7).不整脈用剤(アミオダロン塩酸塩、キニジン硫酸塩水和物、ピルメノール塩酸塩水和物、フレカイニド酢酸塩、ピルシカイニド塩酸塩水和物、プロパフェノン塩酸塩、ベプリジル塩酸塩水和物等)〔8.3、8.4、13.2.1-13.2.5参照〕[本剤の作用を増強することがあり、ジギタリス中毒の症状<悪心・嘔吐・不整脈等>があらわれることがある(機序不明なものも含まれるが、メチルジゴキシン及びジゴキシンの腎排泄が抑制されることによる血中濃度上昇、あるいは、薬力学的相互作用による刺激伝導抑制等があらわれることがある)]。8).β-遮断剤(プロプラノロール塩酸塩、アテノロール、カルベジロール等)〔8.3、8.4、13.2.1-13.2.5参照〕[本剤の作用を増強することがあり、ジギタリス中毒の症状<悪心・嘔吐・不整脈等>があらわれることがある(薬力学的相互作用により、伝導抑制の増強、徐脈の誘発があらわれることがあり、また、カルベジロールではメチルジゴキシン及びジゴキシン合計の血中濃度が上昇したとの報告がある)]。
9).利尿剤(カリウム排泄型利尿剤(チアジド系利尿剤、フロセミド等)、アセタゾラミド)〔8.3、8.4、13.2.1-13.2.5参照〕[本剤の作用を増強することがあり、ジギタリス中毒の症状<悪心・嘔吐・不整脈等>があらわれることがある(過度の利尿により、血中カリウム値が低下しやすくなるとの報告がある)]。10).利尿剤(スピロノラクトン)〔8.3、8.4、13.2.1-13.2.5参照〕[本剤の作用を増強することがあり、ジギタリス中毒の症状<悪心・嘔吐・不整脈等>があらわれることがある(メチルジゴキシン及びジゴキシンの腎排泄が抑制され、血中濃度が上昇するとの報告がある)]。
11).利尿剤(トルバプタン)〔8.3、8.4、13.2.1-13.2.5参照〕[本剤の作用を増強することがあり、ジギタリス中毒の症状<悪心・嘔吐・不整脈等>があらわれることがある(P糖蛋白質を介したメチルジゴキシン及びジゴキシンの排泄の抑制により、血中濃度が上昇するとの報告がある)]。12).血圧降下剤(レセルピン系薬剤)〔8.3、8.4、13.2.1-13.2.5参照〕[本剤の作用を増強することがあり、ジギタリス中毒の症状<悪心・嘔吐・不整脈等>があらわれることがある(薬力学的相互作用により、伝導抑制の増強、徐脈の誘発があらわれることがある)]。
13).アンジオテンシン2受容体拮抗剤(テルミサルタン)〔8.3、8.4、13.2.1-13.2.5参照〕[本剤の作用を増強することがあり、ジギタリス中毒の症状<悪心・嘔吐・不整脈等>があらわれることがある(機序は不明であるが、メチルジゴキシン及びジゴキシン合計の血中濃度が上昇するとの報告がある)]。14).カルシウム拮抗剤(ベラパミル塩酸塩、ジルチアゼム塩酸塩、ニフェジピン等)〔8.3、8.4、13.2.1-13.2.5参照〕[本剤の作用を増強することがあり、ジギタリス中毒の症状<悪心・嘔吐・不整脈等>があらわれることがある(メチルジゴキシン及びジゴキシンの腎排泄が抑制され、血中濃度が上昇するとの報告がある)]。
15).HMG-CoA還元酵素阻害剤(フルバスタチンナトリウム)〔8.3、8.4、13.2.1-13.2.5参照〕[本剤の作用を増強することがあり、ジギタリス中毒の症状<悪心・嘔吐・不整脈等>があらわれることがある(機序は不明であるが、メチルジゴキシン及びジゴキシン合計の最高血中濃度の上昇が認められたとの報告がある)]。16).HMG-CoA還元酵素阻害剤(アトルバスタチンカルシウム水和物)〔8.3、8.4、13.2.1-13.2.5参照〕[本剤の作用を増強することがあり、ジギタリス中毒の症状<悪心・嘔吐・不整脈等>があらわれることがある(P糖蛋白質を介したメチルジゴキシン及びジゴキシンの排泄の抑制により血中濃度の上昇が示唆されている)]。
17).ポリスチレンスルホン酸塩〔8.3、8.4、13.2.1-13.2.5参照〕[本剤の作用を増強することがあり、ジギタリス中毒の症状<悪心・嘔吐・不整脈等>があらわれることがある(腸内のカリウムイオンとのイオン交換により、血中カリウム値が低下するとの報告がある)]。18).交感神経刺激剤(アドレナリン、イソプレナリン塩酸塩等)〔8.3、8.4、13.2.1-13.2.5参照〕[本剤の作用を増強することがあり、ジギタリス中毒の症状<悪心・嘔吐・不整脈等>があらわれることがある(薬力学的相互作用により不整脈があらわれることがある)]。
19).プロトンポンプ阻害剤(オメプラゾール、ラベプラゾールナトリウム等)〔8.3、8.4、13.2.1-13.2.5参照〕[本剤の作用を増強することがあり、ジギタリス中毒の症状<悪心・嘔吐・不整脈等>があらわれることがある(胃酸分泌抑制作用によりメチルジゴキシンの加水分解が抑制され、メチルジゴキシン及びジゴキシン合計の血中濃度が上昇するとの報告がある)]。20).副腎皮質ホルモン剤〔8.3、8.4、13.2.1-13.2.5参照〕[本剤の作用を増強することがあり、ジギタリス中毒の症状<悪心・嘔吐・不整脈等>があらわれることがある(副腎皮質ホルモンにより低カリウム血症が起こるためと考えられている)]。
21).ビタミンD製剤(カルシトリオール等)〔8.3、8.4、13.2.1-13.2.5参照〕[本剤の作用を増強することがあり、ジギタリス中毒の症状<悪心・嘔吐・不整脈等>があらわれることがある(ビタミンD製剤により血中カルシウム値が上昇するためと考えられている)]。22).習慣性中毒用剤(ジスルフィラム)〔8.3、8.4、13.2.1-13.2.5参照〕[本剤の作用を増強することがあり、ジギタリス中毒の症状<悪心・嘔吐・不整脈等>があらわれることがある(ジスルフィラム-アルコール反応時に過呼吸により血中カリウム値が低下したとの報告がある)]。
23).シクロスポリン〔8.3、8.4、13.2.1-13.2.5参照〕[本剤の作用を増強することがあり、ジギタリス中毒の症状<悪心・嘔吐・不整脈等>があらわれることがある(メチルジゴキシン及びジゴキシンの腎排泄が抑制され、血中濃度が上昇するとの報告がある)]。24).抗生物質製剤(エリスロマイシン、クラリスロマイシン、ガチフロキサシン水和物、テトラサイクリン塩酸塩)〔8.3、8.4、13.2.1-13.2.5参照〕[本剤の作用を増強することがあり、ジギタリス中毒の症状<悪心・嘔吐・不整脈等>があらわれることがある(腸内細菌叢への影響によるメチルジゴキシンの代謝の抑制、あるいは、P糖蛋白質を介したメチルジゴキシン及びジゴキシンの排泄の抑制により血中濃度が上昇するとの報告がある)]。
25).抗生物質製剤(アジスロマイシン水和物)〔8.3、8.4、13.2.1-13.2.5参照〕[本剤の作用を増強することがあり、ジギタリス中毒の症状<悪心・嘔吐・不整脈等>があらわれることがある(機序の詳細は不明であるが、P糖蛋白質を介したメチルジゴキシン及びジゴキシンの輸送が阻害されるとの報告がある)]。26).抗生物質製剤(アムホテリシンB、エンビオマイシン硫酸塩)〔8.3、8.4、13.2.1-13.2.5参照〕[本剤の作用を増強することがあり、ジギタリス中毒の症状<悪心・嘔吐・不整脈等>があらわれることがある(これらの薬物により血中カリウム値が低下するためと考えられている)]。
27).HIVプロテアーゼ阻害剤(リトナビル)〔8.3、8.4、13.2.1-13.2.5参照〕[本剤の作用を増強することがあり、ジギタリス中毒の症状<悪心・嘔吐・不整脈等>があらわれることがある(P糖蛋白質を介したメチルジゴキシン及びジゴキシンの排泄の抑制により、血中濃度が上昇するとの報告がある)]。28).エトラビリン〔8.3、8.4、13.2.1-13.2.5参照〕[本剤の作用を増強することがあり、ジギタリス中毒の症状<悪心・嘔吐・不整脈等>があらわれることがある(P糖蛋白質阻害作用により、メチルジゴキシン及びジゴキシン合計の血中濃度が上昇するとの報告がある)]。
29).C型肝炎治療剤(レジパスビル/ソホスブビル配合錠)〔8.3、8.4、13.2.1-13.2.5参照〕[本剤の作用を増強することがあり、ジギタリス中毒の症状<悪心・嘔吐・不整脈等>があらわれることがある(レジパスビルのP糖蛋白質阻害作用により、メチルジゴキシン及びジゴキシン合計の血中濃度が上昇するとの報告がある)]。30).化学療法剤(イトラコナゾール、スルファメトキサゾール・トリメトプリム)〔8.3、8.4、13.2.1-13.2.5参照〕[本剤の作用を増強することがあり、ジギタリス中毒の症状<悪心・嘔吐・不整脈等>があらわれることがある(メチルジゴキシン及びジゴキシンの腎排泄が抑制され、血中濃度が上昇するとの報告がある)]。
31).抗甲状腺剤(チアマゾール、プロピルチオウラシル)〔8.3、8.4、13.2.1-13.2.5参照〕[本剤の作用を増強することがあり、ジギタリス中毒の症状<悪心・嘔吐・不整脈等>があらわれることがある(甲状腺機能亢進の改善に伴いクリアランスが正常になるため、メチルジゴキシン及びジゴキシン合計の血中濃度が上昇するとの報告がある)]。32).ベムラフェニブ〔8.3、8.4、13.2.1-13.2.5参照〕[本剤の作用を増強することがあり、ジギタリス中毒の症状<悪心・嘔吐・不整脈等>があらわれることがある(P糖蛋白質阻害作用により、メチルジゴキシン及びジゴキシン合計の血中濃度が上昇するとの報告がある)]。
33).カルバマゼピン〔8.4参照〕[本剤の作用を減弱することがあるので、併用する場合にはメチルジゴキシン及びジゴキシン合計の血中濃度をモニターするなど慎重に投与すること(併用後、メチルジゴキシン及びジゴキシン合計の血中濃度の低下が認められたとの報告がある)]。34).コレスチラミン<経口>、コレスチミド<経口>〔8.4参照〕[本剤の作用を減弱することがあるので、併用する場合にはメチルジゴキシン及びジゴキシン合計の血中濃度をモニターするなど慎重に投与すること(消化管内での吸着によりメチルジゴキシンの吸収を阻害し、メチルジゴキシン及びジゴキシン合計の血中濃度が低下すると考えられている)]。
35).消化性潰瘍剤(スクラルファート水和物<経口>)〔8.4参照〕[本剤の作用を減弱することがあるので、併用する場合にはメチルジゴキシン及びジゴキシン合計の血中濃度をモニターするなど慎重に投与すること(消化管内での吸着によりメチルジゴキシンの吸収を阻害し、メチルジゴキシン及びジゴキシン合計の血中濃度が低下するとの報告がある)]。36).制酸剤<PPI以外><経口>(水酸化アルミニウム<経口>、水酸化マグネシウム<経口>等)〔8.4参照〕[本剤の作用を減弱することがあるので、併用する場合にはメチルジゴキシン及びジゴキシン合計の血中濃度をモニターするなど慎重に投与すること(消化管内での吸着によりメチルジゴキシンの吸収を阻害し、メチルジゴキシン及びジゴキシン合計の血中濃度が低下するとの報告がある)]。
37).抗生物質製剤(フラジオマイシン)〔8.4参照〕[本剤の作用を減弱することがあるので、併用する場合にはメチルジゴキシン及びジゴキシン合計の血中濃度をモニターするなど慎重に投与すること(メチルジゴキシンの吸収が阻害され、メチルジゴキシン及びジゴキシン合計の血中濃度が低下するとの報告がある)]。38).抗生物質製剤(リファンピシン)〔8.4参照〕[本剤の作用を減弱することがあるので、併用する場合にはメチルジゴキシン及びジゴキシン合計の血中濃度をモニターするなど慎重に投与すること(P糖蛋白質、肝薬物代謝酵素の誘導作用により、メチルジゴキシン及びジゴキシン合計の血中濃度が低下するとの報告がある)]。
39).サルファ剤(サラゾスルファピリジン)〔8.4参照〕[本剤の作用を減弱することがあるので、併用する場合にはメチルジゴキシン及びジゴキシン合計の血中濃度をモニターするなど慎重に投与すること(メチルジゴキシンの吸収が阻害され、メチルジゴキシン及びジゴキシン合計の血中濃度が低下するとの報告がある)]。40).甲状腺製剤(乾燥甲状腺、レボチロキシンナトリウム水和物、リオチロニンナトリウム)〔8.4参照〕[本剤の作用を減弱することがあるので、併用する場合にはメチルジゴキシン及びジゴキシン合計の血中濃度をモニターするなど慎重に投与すること(甲状腺機能低下の改善に伴いクリアランスが正常になるため、メチルジゴキシン及びジゴキシン合計の血中濃度が低下するとの報告がある)]。
41).アカルボース、ミグリトール〔8.4参照〕[本剤の作用を減弱することがあるので、併用する場合にはメチルジゴキシン及びジゴキシン合計の血中濃度をモニターするなど慎重に投与すること(併用によりメチルジゴキシン及びジゴキシン合計の血中濃度の低下が認められたとの報告がある)]。42).セイヨウオトギリソウ<セント・ジョーンズ・ワート>含有食品〔8.4参照〕[本剤の作用を減弱することがあるので、併用する場合にはメチルジゴキシン及びジゴキシン合計の血中濃度をモニターするなど慎重に投与し、本剤投与時はセイヨウオトギリソウ含有食品を摂取しないよう注意すること(メチルジゴキシン及びジゴキシンの排泄が促進され血中濃度が低下するおそれがある)]。
43).ブピバカイン塩酸塩水和物〔8.4参照〕[ブピバカイン塩酸塩水和物の副作用を増強したとの報告がある(薬力学的相互作用によると考えられている)]。44).ヘパリン〔8.4参照〕[ヘパリンの作用を減弱するおそれがある(抗凝血作用に拮抗すると考えられている)]。
45).制吐作用を有する薬剤(スルピリド、メトクロプラミド、ドンペリドン等)〔8.3、8.4参照〕[ジギタリス中毒の症状<悪心・嘔吐・食欲不振等>を不顕化するおそれがある(これらの薬剤の制吐作用のため本剤の中毒症状が判別しにくくなる)]。(過量投与)
13.1.症状過量投与時、ジギタリス中毒が起こることがある〔8.3、11.1.1参照〕。
13.2.処置13.2.1.薬物排泄:過量投与時、胃内のメチルジゴキシンの吸収を防止するために活性炭が有効と報告されている〔10.2、11.1.1参照〕。
13.2.2.心電図:過量投与時、直ちに心電図による監視を行い、前記のジギタリス中毒特有の不整脈の発現に注意する〔10.2、11.1.1参照〕。13.2.3.重篤な不整脈の治療法:過量投与時の徐脈性不整脈及び徐脈性ブロックにはアトロピン等が用いられる。過量投与時、重篤な頻脈性不整脈が頻発するときは塩化カリウム、リドカイン、プロプラノロール等が用いられる〔10.2、11.1.1参照〕。
13.2.4.血清電解質:過量投与時、特に低カリウム血症に注意し、異常があれば補正する。過量投与時の高カリウム血症には、炭酸水素ナトリウム、グルコース・インスリン療法、ポリスチレンスルホン酸ナトリウム等が用いられる〔10.2、11.1.1参照〕。
13.2.5.腎機能:過量投与時、メチルジゴキシン及びジゴキシンは主として腎から排泄されるので腎機能を正常に保つ(一般に血液透析は無効であるとされている)〔10.2、11.1.1、16.5参照〕。(適用上の注意)
14.1.薬剤交付時の注意PTP包装の薬剤はPTPシートから取り出して服用するよう指導すること(PTPシートの誤飲により、硬い鋭角部が食道粘膜へ刺入し、更には穿孔をおこして縦隔洞炎等の重篤な合併症を併発することがある)。
(保管上の注意)室温保存。
[PDF] 【金属含有薬剤と相互作用を起こすおそれのある薬剤】
次の副作用があらわれることがあるので、観察を十分に行い、異常が認められた場合には投与を中止するなど適切な処置を行うこと。
11.1.重大な副作用11.1.1.ジギタリス中毒(頻度不明):高度徐脈、二段脈、多源性心室性期外収縮、発作性心房性頻拍等の不整脈があらわれることがある。また、さらに重篤な房室ブロック、心室性頻拍症あるいは心室細動に移行することがある。
初期症状として消化器症状、眼症状、精神神経系症状があらわれることが多いが、それらの症状に先行して不整脈が出現することもある〔8.3、9.1.3、9.1.5、9.1.6、9.2.1、9.2.2、9.7小児等、9.8高齢者の項、11.2、13.1、13.2.1-13.2.5参照〕。11.1.2.非閉塞性腸間膜虚血(頻度不明):腸管壊死に至った例も報告されているので、激しい腹痛、血便等の症状があらわれた場合には投与を中止し、適切な処置を行うこと。
11.2.その他の副作用1).*消化器:(0.1%以上)悪心・嘔吐(0.8%)、食欲不振(0.6%)、下痢、(0.1%未満)下腹部不快感、腹部膨満感、腹痛。
2).循環器:(0.1%以上)不整脈(0.5%)、動悸、(頻度不明)頻脈。3).*眼:(0.1%未満)霧視、羞明、(頻度不明)光がないのにちらちらみえる、黄視、緑視、複視。
4).*精神神経系:(0.1%以上)頭痛、(0.1%未満)めまい、(頻度不明)失見当識、錯乱、譫妄。5).肝臓:(頻度不明)AST上昇、ALT上昇、γ-GTP上昇、Al-P上昇。
6).血液:(頻度不明)血小板数減少。7).過敏症:(0.1%未満)発疹、(頻度不明)蕁麻疹、紫斑、浮腫。
8).その他:(0.1%未満)女性型乳房、(頻度不明)筋力低下。*)〔11.1.1参照〕。
18.1作用機序
モルモットの摘出左心房標本において、電気的駆動による心収縮力に対するメチルジゴキシン及びジゴキシンの作用を比較した試験で、両薬物の心収縮力最大増加率及びその時の薬物濃度並びに心停止を起こす濃度は同等であった。また、イヌを用い、血圧、心拍数、心電図、左室内圧及び一次微分(dp/dt)を測定した結果、メチルジゴキシンはmax.dp/dtを著明に増加し、軽度の血圧上昇及び心拍数の減少を起こし、これらの作用はジゴキシンとほぼ同程度であった。また、心室性期外収縮及び心停止発現量はメチルジゴキシンとジゴキシンの間に差はみられなかった。
健康成人において、クラリスロマイシン錠剤(250mg)を経口投
ジゴキシンの代謝には腸内細菌が関わっているのをご存じだろうか?ジゴキシンとエリスロマイシンの併用によってジゴキシンの血中濃度が上昇するといわれている。添付文書には「エリスロマイシン、クラリスロマイシン、テトラサイクリンとの併用によってへの影響による本剤の代謝の抑制、あるいは、P糖タンパク質を介した本剤の排泄の抑制により血中濃度が上昇するとの報告がある。」とされているが、クラリスロマイシンはCYP3A4阻害薬でありP糖タンパク質の阻害薬であることは今となっては誰でも知っているが、テトラサイクリンにはそのような阻害作用はないはずだ。ではエリスロマイシンはどうなんだろう、というのが今回のテーマだ。
エリスロマイシンとテトラサイクリンがジゴキシンの血中濃度を上げる報告はNew Engl J Medに掲載されたLindenbaumらの報告で抗生物質がジゴキシンを代謝する腸内細菌叢への影響を初めて明らかにした。内容はジゴキシン錠を投与し定常状態に達した10~17日目に、エリスロマイシンやテトラサイクリン系抗生物質を5日投与により、患者の10%で尿および糞便中のジゴキシン代謝物の排泄が阻害され、血清ジゴキシン濃度が2倍に上昇したという内容である。これは抗菌作用によって腸内細菌叢が変化し、嫌気性菌Eubacterium lentumによるジゴキシンの不活性物質への代謝(ジゴキシンのジヒドロジゴキシンへの代謝)が阻害されることによるという内容である()。このためジゴキシン服用中の患者のうち腸内細菌としてE. lentumを持っている10%の人でジゴキシンの吸収が促進し、バイオアベイラビリティが上昇し、血中濃度が2倍になるというものである。
この論文のデータは非常にきれいであるが、ジゴキシンを代謝するE. lentumを常在菌として持っている人は10%にすぎず(報告によってはもっと高い報告もある)、腸内細菌叢の変化によって起こる血中濃度上昇は10人に1人しか起こりえないことになる。
クラリスロマイシンによる血中ジゴキシン濃度の上昇はジゴキシンが腎排泄性薬物であるため、近位尿細管のP糖タンパク質によるジゴキシンの排泄をクラリスロマイシンが阻害することによって起こると考えがちで、実際にそのような臨床報告もあった。筆者は白鷺病院時代に年間600件のジゴキシンのTDMをやっていた累積データから、クラリスロマイシンが併用された腎機能の廃絶した透析患者6名(うち4名は無尿)すべてで血中ジゴキシン濃度が平均3倍(1.8~4倍、非透析患者での相互作用も平均約3倍に上昇する())に上昇することを明らかにした()。P糖タンパク質阻害薬のベラパミル(ワソラン)が併用されていた症例4の血中濃度/用量比(C/D比)はもともと高く、症例3では結核によりP糖タンパク質を誘導するリファンピシンが投与されたときにはジゴキシン濃度は1/3に低下し、クラリスロマイシン併用によりリファンピシン中止時の3倍になるなど、クラリスロマイシンが併用された6名全員で明らかな血清ジゴキシン濃度の上昇が認められた。すなわちクラリスロマイシンとジゴキシンの相互作用はLindenbaumらの報告のように10%の確率で起こる相互作用ではなく、併用された6名全員に起こった相互作用であること、無尿の透析患者では尿細管機能も含め完全に腎機能が廃絶しているため、この相互作用はクラリスロマイシンが尿細管ではなく、胆管あるいは消化管のP糖タンパク質によるジゴキシンの排泄が阻害されているに違いないと考えている。
ジゴキシンとバラパミルは心房細動のレートコントロールによく併用されるため、非常に重要な相互作用であるが、ベラパミル錠240mg/日の併用によって透析患者のジゴキシン濃度は約2倍に上昇する。これに関してはジゴキシン服用者5名に経口ベラパミル最大用量の240mg/日を併用して腎クリアランスと胆汁クリアランス(胆汁を胆管からドレナージして採取する臨床試験は現在では倫理委員会を通らないのでは?)をクロスオーバー試験で示した報告で、腎クリアランスに変化はなかったものの胆汁クリアランスが有意に43%低下したことから、ジゴキシンの尿細管分泌よりも胆汁排泄、あるいは小腸での排泄が阻害されやすいのではないかということが推察できる()。 Lindenbaumらはこれ以降も権威の高い雑誌でこの現象について報告し続けたが、17年後にAm Fam Physician誌に「E. lentumを常在菌として持っていればジゴキシンの血中濃度が上がらないだろうが、1966年以来、私や私の仲間がこのような現象を見たことも聞いたこともない」というLetter to Editorが届いている。現在では同じマクロライド系のエリスロマイシンもクラリスロマイシンと同様、P糖タンパク質阻害のメカニズムと考えるのが妥当であろう。
薬物代謝に関わる腸内細菌はジゴキシンに関しては疑わしい部分もあるが、腸内細菌が薬物代謝に関わっている例はこれだけではない。モルヒネが高齢者や腎機能低下患者で使いにくいのはM6G(モルヒネ-6-グルクロニド)というグルクロン酸抱合体が蓄積してせん妄をきたしやすいことによる。グルクロン酸抱合体は極性が高いため腎機能正常者であれば速やかに尿中に排泄されるが腎機能が低下すると蓄積しやすいためである。ただしそれだけではない。腎機能が低下して蓄積した抱合体は胆管のトランスポータによって胆汁排泄されやすいが、十二指腸に排泄された抱合体が回腸で腸内細菌の持つβグルクロニダーゼによって脱抱合され、再びモルヒネとして吸収されて肝臓で代謝されるという「腸肝循環」によって血中濃度が下がりにくくなることがある()。腸肝循環する薬物にはモルヒネのほかにも先述のジゴキシン()、アセトアミノフェン、コルヒチン、エストロゲンなどの薬物のほかにもたくさんあるので本ホームページのを見ていただきたい。さらに腎機能悪化の原因となるインドキシル硫酸、パラクレジル硫酸、トリメチルアミン-N-オキサイドなどのいずれの尿毒素uremic toxinも腸内細菌によって産生されているが、これについては次回、第11回で触れたいと思う。
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食物繊維は消化されないため残渣となって大腸に達し、腸内細菌のエサになる。それによって腸内細菌はして腸内を酸性にする。腸内が酸性になるとBifidobacteriumなどのいわゆる善玉菌の増殖を促進し、酢酸には強い殺菌作用があるため悪玉菌の増殖を抑え、コレステロール蓄積抑制、がん予防効果も示す。食物繊維を多く摂ると地中海食を摂っている人やベジタリアンに多いPrevotella属の腸内細菌が増えて、ダイエット効果がある。おまけに腸内細菌はビタミンB群(B1, B2, B6, B12)、ビタミンK、葉酸などのビタミンも合成してくれる。ヒトの細胞は37兆個(2013年に発表されたEva Bianconiらの論文以前は60兆個と言われていた)しかないが、腸内細菌は100~1000兆個あって、ヒトの細胞と共生しているのだ。
腸内細菌の中である種のクロストリジウム属が産生する酪酸が減少すると、小腸にあるパイエル板に潜むT細胞がTregに変わることができなくなるため、いわゆる免疫暴走が起こってしまうことが明らかにされている。免疫暴走によって潰瘍性大腸炎やクローン病などの自己免疫疾患を起こすと、共生生物である腸内細菌に害が及ぶが、そうならないようにTregが保護しているのだ。小腸にあるパイエル板と大腸の入り口にある盲腸・虫垂が腸管免疫に関して非常に重要な役割を担っていることも解明されつつある。このように免疫システムはヒトが疾患に罹るのを守ってくれているだけでなく、腸内細菌との重要な共生関係を維持している。
食事の欧米化によってファストフードの消費が増え、味噌・醤油・納豆などの発酵食品を摂らなくなると腸内細菌の種が蒔かれないし、そのエサである食物繊維が腸に入ってこないため、多様だった腸内細菌叢が質的にも量的にも著明に変化する。毎年平均寿命のトップを争っていた長寿王国だった沖縄の男性の平均寿命の順位が2000年以降になって下降し続けているのは、米軍基地の多い影響を受けて食事がいち早く欧米化したのが原因だといわれている()。 自分自身の正常細胞に対して免疫細胞が過剰に反応した結果起こる自己免疫疾患である1型糖尿病有病率は日本では0.1%で、年間2名/10万人の発症率だったのが、欧米ではもともと5倍以上の発症率であったが世界的に増加傾向にあり、現在の米国は年間10万人当たり約30名に急増し、わが国の自己免疫疾患も急増している ()。腸は免疫反応を抑制する働きがあるが、プロバイオティクスの投与によって有意に1型糖尿病の発症を抑制できることが動物実験で解明されている。さらに腸内細菌叢が産生する酪酸が自己抗体産生を抑制して最終的に関節リウマチの症状を改善することも明らかにされている。
クラリスロマイシン等の強いCYP3A阻害剤との相互作用(併用注意)
アトピー性皮膚炎、気管支喘息、花粉症などのIgE抗体が関与する1型アレルギー疾患が1960年代以降、増えている()。日本人は江戸時代以降、50%以上の人が回虫などの寄生虫に感染していており、私が生まれた1954年でも田畑の肥料として下肥が使われていたので、30%近くの人に寄生虫が寄生しており、年に1回は寄生虫検査をやらされたものだ。寄生虫がヒトに感染すると細菌やウイルス感染と異なり寄生虫特異的なIgE抗体だけでなく、非特異的なIgE抗体を産生する。これによって高親和性IgE受容体を覆いつくすため、スギ花粉などのアレルゲンが付着できなくなってアレルギーが抑えられていたといわれている。T細胞から変化したヘルパーT細胞のうち、Th1は病原菌を退治する細胞性免疫を促進する司令官であったが感染症の減少によってTh-1の活性化が起こらず、Th2はもともと寄生虫などの異物を退治する司令官だったが、寄生虫がいなくなった現在ではIgEを産生して好酸球主体のアレルギーを起こす司令官になってしまった。回虫や蟯虫などは実は寄生虫はでもあったがアレルギーを防いでいたことを考慮すれば共生虫でもあったのかもしれない。 これらのほかにも大気汚染、自動車の排ガス(特にディーゼルエンジン)、水質汚染、中国から飛来するPM2.5や食品添加物などの化学物質の増加など、挙げるときりないが、①~④のような腸内細菌叢の変化、過度の衛生環境、寄生虫の消失などによって腸管に外敵が入ってこなくなると、これによって免疫システムが過剰に反応することが近年、急増している様々な疾患の原因になっている。健全な腸内細菌叢の存在によって、がん細胞が免疫逃避に使っているTregの働きで、全身の各所で過剰に活性化し暴走している免疫細胞がなだめられ、アレルギーや自己免疫疾患が抑えられていることがわかってきた。
1960年代以来、かつて存在が受け入れられていたサプレッサーT細胞という概念は提唱されてから30年たって消失し、現在は免疫の暴走を制御している主役は大阪大学・坂口志文先生が発見した制御性T細胞、略してTregであり、人体に共生している腸内細菌とともに感染防御、アレルギー疾患、自己免疫疾患、慢性炎症、腫瘍免疫、移植免疫などをコントロールしていると考えられている。
ジゴキシンの代謝には腸内細菌が関わっているのをご存じだろうか?ジゴキシンとエリスロマイシンの併用によってジゴキシンの血中濃度が上昇するといわれている。添付文書には「エリスロマイシン、クラリスロマイシン、テトラサイクリンとの併用によってへの影響による本剤の代謝の抑制、あるいは、P糖タンパク質を介した本剤の排泄の抑制により血中濃度が上昇するとの報告がある。」とされているが、クラリスロマイシンはCYP3A4阻害薬でありP糖タンパク質の阻害薬であることは今となっては誰でも知っているが、テトラサイクリンにはそのような阻害作用はないはずだ。ではエリスロマイシンはどうなんだろう、というのが今回のテーマだ。
エリスロマイシンとテトラサイクリンがジゴキシンの血中濃度を上げる報告はNew Engl J Medに掲載されたLindenbaumらの報告で抗生物質がジゴキシンを代謝する腸内細菌叢への影響を初めて明らかにした。内容はジゴキシン錠を投与し定常状態に達した10~17日目に、エリスロマイシンやテトラサイクリン系抗生物質を5日投与により、患者の10%で尿および糞便中のジゴキシン代謝物の排泄が阻害され、血清ジゴキシン濃度が2倍に上昇したという内容である。これは抗菌作用によって腸内細菌叢が変化し、嫌気性菌Eubacterium lentumによるジゴキシンの不活性物質への代謝(ジゴキシンのジヒドロジゴキシンへの代謝)が阻害されることによるという内容である()。このためジゴキシン服用中の患者のうち腸内細菌としてE. lentumを持っている10%の人でジゴキシンの吸収が促進し、バイオアベイラビリティが上昇し、血中濃度が2倍になるというものである。
この論文のデータは非常にきれいであるが、ジゴキシンを代謝するE. lentumを常在菌として持っている人は10%にすぎず(報告によってはもっと高い報告もある)、腸内細菌叢の変化によって起こる血中濃度上昇は10人に1人しか起こりえないことになる。
クラリスロマイシンによる血中ジゴキシン濃度の上昇はジゴキシンが腎排泄性薬物であるため、近位尿細管のP糖タンパク質によるジゴキシンの排泄をクラリスロマイシンが阻害することによって起こると考えがちで、実際にそのような臨床報告もあった。筆者は白鷺病院時代に年間600件のジゴキシンのTDMをやっていた累積データから、クラリスロマイシンが併用された腎機能の廃絶した透析患者6名(うち4名は無尿)すべてで血中ジゴキシン濃度が平均3倍(1.8~4倍、非透析患者での相互作用も平均約3倍に上昇する())に上昇することを明らかにした()。P糖タンパク質阻害薬のベラパミル(ワソラン)が併用されていた症例4の血中濃度/用量比(C/D比)はもともと高く、症例3では結核によりP糖タンパク質を誘導するリファンピシンが投与されたときにはジゴキシン濃度は1/3に低下し、クラリスロマイシン併用によりリファンピシン中止時の3倍になるなど、クラリスロマイシンが併用された6名全員で明らかな血清ジゴキシン濃度の上昇が認められた。すなわちクラリスロマイシンとジゴキシンの相互作用はLindenbaumらの報告のように10%の確率で起こる相互作用ではなく、併用された6名全員に起こった相互作用であること、無尿の透析患者では尿細管機能も含め完全に腎機能が廃絶しているため、この相互作用はクラリスロマイシンが尿細管ではなく、胆管あるいは消化管のP糖タンパク質によるジゴキシンの排泄が阻害されているに違いないと考えている。
ジゴキシンとバラパミルは心房細動のレートコントロールによく併用されるため、非常に重要な相互作用であるが、ベラパミル錠240mg/日の併用によって透析患者のジゴキシン濃度は約2倍に上昇する。これに関してはジゴキシン服用者5名に経口ベラパミル最大用量の240mg/日を併用して腎クリアランスと胆汁クリアランス(胆汁を胆管からドレナージして採取する臨床試験は現在では倫理委員会を通らないのでは?)をクロスオーバー試験で示した報告で、腎クリアランスに変化はなかったものの胆汁クリアランスが有意に43%低下したことから、ジゴキシンの尿細管分泌よりも胆汁排泄、あるいは小腸での排泄が阻害されやすいのではないかということが推察できる()。 Lindenbaumらはこれ以降も権威の高い雑誌でこの現象について報告し続けたが、17年後にAm Fam Physician誌に「E. lentumを常在菌として持っていればジゴキシンの血中濃度が上がらないだろうが、1966年以来、私や私の仲間がこのような現象を見たことも聞いたこともない」というLetter to Editorが届いている。現在では同じマクロライド系のエリスロマイシンもクラリスロマイシンと同様、P糖タンパク質阻害のメカニズムと考えるのが妥当であろう。
クラリスロマイシンは,1991年3月に承認されたマクロライド系抗生物質である。 ..
接触感染し、芽胞を形成するのでエタノールが無効なため、通常の接触予防策ではなく、石鹸を用いる物理的な手洗い・環境の清拭、使い捨て手袋、使い捨てガウンの着用を主とした標準予防策、便失禁のある患者の隔離が重要と考えられる。
またCD腸炎を発症した全患者に抗菌薬が投与され、発症者のうち高頻度で胃酸分泌抑制薬が投与されていたため、これらの症例に対して、CD腸炎予防のためのプロバイオティクス投与が有効な可能性がある。ただし抗菌薬耐性とうたっている整腸剤投与であってもバンコマイシンやキノロンによって死滅するものがほとんどである。小児の報告ではあるが、抗菌薬単独投与群の抗菌薬関連下痢症は59%に発症したが、CDの増殖に拮抗作用を示す細菌製剤としてClostridium butyricum(ミヤBM錠: 宮入菌)を抗菌薬と同時に予防投与した患児の抗菌薬関連下痢症発症率は9%、さらに抗菌薬投与3日前に予防投与すると5%に激減した()。しかも抗菌薬が投与された群では嫌気性菌が増加しビフィズス菌の減少が防げた。 これらの結果から我々の経験した院内アウトブレイクも宮入菌の予防投与によって防げたかもしれない。宮入菌もCDと同様に芽胞を形成するため、バンコマイシン投与によっても死滅しない。今回提示した症例でレボフロキサシン投与によってCD感染が再発したように、CD感染は再発しやすい。そのため再発を防ぐためバンコマイシン投与中止後も宮入菌の投与を続ける必要があったのかもしれない。宮入菌は抗菌薬投与にも関わらず、70%の患者から宮入菌が糞便中から分離され、そのうち半数は芽胞菌より、非芽胞菌が多く、投与された生菌が消化管内で発芽していることを示している。糞便中CDまたはトキシンの検出率は、抗菌薬投与後、著しく増加するが、その増加は宮入菌の併用によって著明に抑制される。宮入菌はCDの発育とトキシンAの産生を抑制し、CDの糞便中検出率を減少させる。糞便移植(FMT: Fecal Microbiota Transplantation)はさらに有効でVCM14日標準投与群の再発なし治癒率が30.8%だったのに比し糞便の経鼻注入2回群の治癒率は93.8%であった()。 宮入菌はこのほかにも免疫チェックポイント阻害薬が投与された時に発症しやすい重症大腸炎を防ぐ目的で使われることがあるが、非小細胞肺がんに宮入菌を併用すると生存率が向上したという結果が熊本大学呼吸器内科から報告された()。さらに糞便移植によって免疫チェックポイント阻害薬の反応性が向上するという報告もある。 宮入菌は酪酸菌であり、酪酸はもともと抗炎症作用があり上皮細胞のエネルギー源となるため、便秘症状も改善するが、特に下痢気味の人に良く効く整腸剤のイメージがあり、確かに下部消化器疾患に対する有効性は高い。しかし最近の報告では酪酸は血糖値の急上昇を抑えるGLP-1や食欲を抑えるペプチドYYなど消化管ホルモンの分泌を促し、脂肪が貯まりにくい体質にして肥満を防止するといわれている。また酪酸は小腸のパイエル板に働いて免疫細胞の暴走を止める制御性T細胞の産生を誘導することも注目されており、アレルギー疾患や自己免疫疾患の発症防止にも関与する可能性があり、宮入菌は単なる整腸剤にとどまらない可能性を秘めている。
医療用医薬品 : ジゴキシン (ジゴキシン錠0.125mg「AFP」 他)
軽症者ではメトロニダゾールを1.0~1.5g/日投与するが、小腸で大部分が吸収されるために結腸内への移行が不十分であることが欠点である。重篤な症例にはVCM0.5~2g/日を経口投与する。下痢、発熱は1~2日間の投与で軽快し、7~14日の投与でほとんどの症例が治癒する。ただし米国ではバンコマイシンの使用はメトロニダゾールによる治療に反応しない症例や、重篤で生命に危険性のあるような場合の使用に限られており、抗生剤腸炎の初期治療にはVCMは使用すべきではないとされている(米国防疫センター:VCMの耐性菌を防ぐために)。
最近の報告ではVC M耐性株が増加傾向であり、以前に説明したようにグラム陽性菌に強くバイオアベイラビリティが非常に低い(イヌのデータで3%以下)代替薬としてマクロライド系抗菌薬であるフィダキソマイシン(ダフクリア錠)が使用される。糞便中濃度は高いものの、バクテロイデスなどの腸内細菌叢にあまり影響しないので、CDに選択的に作用すると考えられている。
CD腸炎の再発防止のためには抗CDトキシンB ヒトモノクローナル抗体であるベズロトクスマブ(ジーンプラバR)が利用でき、CDトキシン B に結合し、CD トキ シン B と標的細胞との結合を阻害することによってトキシンの活性を中和するが抗菌活性を有していないことから、CD腸炎の抗菌薬治療と併せて使用する。
として1回750mg(力価)及びランソプラゾールとして1回30mgの3剤
この症例が治癒後、院内感染によってCD腸炎患者は同じ病棟内で合計16名となったが、全員が発症前に抗菌薬を投与されており、抗菌薬の併用はCD感染症の治癒率を低下させることが明らかになっている。H2ブロッカーのファモチジン、ラニチジン、プロトンポンプ・インヒビター(PPI)のランゾプラゾールといった胃酸分泌抑制薬9名および制酸薬服用者3名で16名中12名(75%)で、同施設内の全透析患者における38.3%に比べ高かかったことから、胃酸抑制が腸炎の発症に関与している可能性が考えられた。さらにある大学に依頼したCDの遺伝子検査結果によると全員が初発の偽膜性腸炎患者と同じCDであり、16名全員が院内感染であることが判明した。
経口VCMの推奨量は0.5-1g/日の7-10日投与(添付文書用量は1回0.125~0.5gを1日4回)で、Keighleyらは0.125gの4回/日投与で十分な便中濃度を保ったとしている。本症例は重篤であったため、1日2.0gの投与に踏み切ったが、CD感染に対してVCMの大量投与は腸内細菌叢を崩壊する可能性があるため、少量の方がよかったかもしれない。
第101回薬剤師国家試験 問274〜275(実践問題) 過去問解説
筆者が小学生のころの1960年代前半に友人で喘息、アトピー、花粉症を持っていることを見たことも聞いたこともなかった。そして20年後、筆者が父親になった1980年代に恵まれた2人の子はともにアトピー性皮膚炎、それが治るとアレルギー性鼻炎や喘息になったし、同学年の子供たちの約半数がこのようなアレルギーマーチになっていたように記憶している。このたった20年間に何が変わったのであろうか?食事の内容が豊かになり、内容が欧米化したことや化学物質が増えたことなどがとりざたされている。一般的な風邪のほとんどはウイルス感染であり、抗菌薬は効果がないことからも、不要な抗菌薬の使用は避ける必要があるのだが、これらに対して経口抗菌薬を気軽に処方することも原因ではないだろうか?
2019年の2月に腸内細菌叢に興味を持っていたのでアランナ・コリン著「あなたの体は9割が細菌微生物の生態系が崩れはじめた」()という非常に興味深い本を読んだ。第2次世界大戦後に抗菌薬が広く開発され、おかげでその当時の死亡率第1位、2位であった肺炎や結核などの感染症が著しく減少した。これは非常に喜ばしいことであったが、逆になぜか大腸がんやアレルギー性疾患や1型糖尿病やリウマチなどの自己免疫疾患、日本人には少なかった肥満やクローン病(欧米の1/10)や尋常性乾癬(日本で0.1%、世界で3%)、うつ病などの心の病なども大幅に増えたのだ()。そしてこれらのうち大腸がんを除くといずれも、なぜか若年発症の病気であり、これらに加えて生活習慣病と言われている2型糖尿病、CKD、心不全、脳卒中、高血圧、がんも増えたがこれらは小児期の過体重が原因と言われている。これらの病気の増加は欧米で始まったが、日本でも同様の現象が起こっているのはカロリー過多による肥満だけではなく、食事の欧米化によって日本人が古くから摂り続けてきた食物繊維や発酵食品の摂取不足が腸内細菌叢を変化させたことが原因ではないかと思うようになった。腸内細菌、あるいは小腸および大腸は人体における最大の免疫器官と言っても過言ではない。小腸の内側にある絨毛が未発達な場所にあるパイエル板は腸管免疫とよばれる、生体防御に関わる免疫機構において重要な働きを担っている。注意欠陥多動性障害ADHDや強迫性障害、双極性障害、統合失調症、自閉症、うつ病、パーキンソン病、認知症は免疫系の過剰反応による炎症が関係しているといわれている。有益な細菌を腸に加えると免疫系の過剰興奮を鎮める作用がある。
もしも腸内細菌叢の変化がこのような病気を増やしているのだとしたら糖尿病、CKD、心不全、脳卒中、高血圧と言えば腎機能悪化と大きく関わってくるため、聞き流すわけにはいかない。これらの大きな原因は①食事で食物繊維を摂らなくなったから、②抗生物質が投与されて腸内細菌叢が変化したから、あるいは本書の指摘している③免疫系の発育に必要なのは古くから共生していた微生物のコロニー形成の異常 の3つに絞られるのではないだろうか。ヒトの体細胞は37兆個に対し、腸内細菌は重量では1kg程度であろうが、100~1000兆個ある。つまり、アランナ・コリンの「あなたの体は9割が細菌」の書名の意味は腸内細菌叢microbiotaを形成する細菌数が体細胞数の10倍あることを意味している。
腸内細菌叢を健全化すればO157, サルモネラ属菌、カンピロバクターなどの腸菅での細菌感染を防御してくれる。さらにプレバイオティクスである食物繊維をしっかり摂り、プロバイオティクスである発酵食品をしっかり摂取することによって、いわゆる善玉菌を増やして短鎖脂肪酸を産生し、結腸の蠕動運動を促進して大腸がんを防いでいる。男性では直腸がんが多いのに対し、女性では盲腸から下降結腸でも発症しやすいのは善玉菌の減少によっておこる便秘と関係しているからと言われている。がんの死亡率は男性の方が高いのだが、女性では第1位、男性は第3位であり、1975年以降40年で4倍以上に大腸がんは増えている()。これは食事の欧米化・精製穀物の増加に伴い食物繊維摂取量が低下し腸内腐敗が進行しているためと言われている。
そういえば筆者が子供の1960年ころ、大きな感染症にかかった時にはペニシリンGを臀部に筋注してもらっていた。経口抗菌薬があまり使われていなかった時代のことだ。ところが1980年代には様々な抗菌薬が登場した。抗菌薬シリーズの第1回で触れたが、第1世代よりも第2世代、第2世代よりも第3世代抗菌薬の方が薬価が高く定められており、このころはこのシリーズの第7回で述べたように薬価差が病院・製薬会社の利益になるため、製薬メーカーはこぞって第3世代の経口抗菌薬を開発し発売した。そして感染症にかかった小児に対してウイルス性疾患であり、効くはずのない風邪に対しても抗菌薬を投与したのであった。
早めに登場した経口抗菌薬の吸収率は概して高い。もともとβラクタム系抗菌薬は親水性が高いため、消化管の脂質二重層を通過できないはずだが、たまたま立体構造がアラニル-アラニンのようなジペプチド構造に似ていれば小腸上皮細胞に存在するペプチドトランスポータPEPT1の基質として認識されるため吸収される。おそらくペニシリン系のアンピシリン、アモキシシリン、第1世代セフェムのセファレキシン、セファクロルなどがこれらに相当し、これらの吸収率は概して高い(育薬に活用できるデータベース「3.薬効別分類表」にある参照)。そして問題となる第3世代セフェムはピボキシル基などをくっつけて脂溶性を高めて無理やり吸収率を上げさせたものばかりだ()。そもそも外来などの軽症例であればグラム陽性菌に効果のある第1世代抗菌薬が最も使う頻度が高いはずなのに、なぜこんなにたくさんの第3世代セフェムが必要なのかも理解できない。これらの第3世代セフェム系抗菌薬は吸収率が不明のものや、わかっていてもバイオアベイラビリティが50%以下のものが多い。これは効果が期待できないだけでなく耐性菌の増加に結びづく。吸収されなかった抗菌薬は糞便中に排泄されるが、この前に腸内細菌を殺菌してしまう。グラム陰性菌に強い第3世代セフェムだからグラム陰性菌の大腸菌も死滅するであろう。これによる腸内細菌叢の破壊が大問題なのだ。これらの抗菌薬が効かないクロストリディオイディス・ディフィシル菌Clostridioides difficile(2016年以降Clostridiumから名称変更;ミヤBMの宮入菌はClostridium butyricum のまま)を相対的に増殖させると、Clostridioides difficile腸炎や偽膜性腸炎という重症下痢症のリスクを高めることもあるが、今のところPubMed検索での報告は見当たらない。
もっと大きな懸念は最初に書いたようにウイルス感染の風邪などに対しても、効かない経口抗菌薬を気軽に処方することによって腸内細菌叢が激変することによって今までは起こることのなかったアレルギー性疾患が増えてしまったのではないかということである。これに関しては英国ブリストル大学の報告で2歳までに抗菌薬を投与されていた小児は7.5歳になるまでに喘息(OR1.75: 95%CI 1.40-2.17)を発症する率が有意に高く、2歳までに4回以上投与された場合には、喘息(OR2.82: 95%CI 2.19-3.63)だけでなく湿疹(OR1.41: 95%CI 1.14-1.74)、花粉症(1.60 95%CI 1.21-2.10)などのアレルギー性疾患を発症するオッズ比が有意に高かったことが明らかにされている()。わが国でも2歳までの抗菌薬の使用と5歳におけるアレルギー疾患の有症率との間には有意な関連があり、抗菌薬を使用した群でアレルギー疾患の発症リスクが高くなることを成育医療研究センター内の出生コホートデータを使用した解析で見いだされている。ただし小児期の抗菌薬投与はアレルギー疾患と関与しないという報告があるのも事実だ。
またピボキシル基を付けて吸収率を上げるが吸収されるセフカペン ピボキシル塩酸塩水和物(フロモックス)、セフジトレン ピボキシル(メイアクト)、セフテラム ピボキシル(トミロン) 、テビペネム ピボキシル(オラペネム)はくっついているピボキシル基からピバリン酸を生じ、カルニチン抱合されるためカルニチン欠乏によってβ酸化が行われず、もともとカルニチンの貯蔵臓器である筋肉量の少ない小児では糖新生ができないため、低血糖を起こしやすくなることに関しては非常に多くの副作用報告がある。これは食事摂取が少ない、あるいは抗菌薬投与期間が長い患児で起こりやすいので気を付けよう。
1) Khansari PS, Sperlagh: Inflammopharmacology 20: 103-107, 2112
2) Hoskin-Parr L, et al: Pediatr Alergy Immunol 24: 762-771, 2013
3)Hanada KY, et al: Ann Allergy Asthma Immunol 119: 54-58, 2017
4)ピボキシル基を有する抗菌薬投与による小児等の重篤な低カルニチン血症と低血糖について. 医薬品医療機器総合機構PMDAからの医薬品適正使用のお願い 2012年4月
ジゴキシン錠 ₀.₁₂₅ mg ₁ 回 ₁ 錠( ₁ 日 ₁ 錠)
前回の抗菌薬シリーズ第4回で、腎毒性のあるゲンタマイシンはから考えると1回少量投与で1日数回投与よりも1日1回大量投与の方が、腎毒性が少なく殺菌力も高い安全で有効性が高くなる投与法であると解説した。しかし若い薬剤師や医師の方は当たり前に理解しているPK/PD理論であっても、なぜ「1回少量を1日数回投与」の方が「1日1回大量投与」よりも安全性が低いのかについては理解に苦しむ方がいるのではないだろうか。ここで、抗菌薬のPK/PD理論について改めて説明したい。これらの理論は米国のWillian A Craig先生の研究成果によるもので、2008年の日本TDM学会の特別講演でCraig先生が講演していただける予定であったが、脳梗塞のため来日が急遽中止になったのが非常に残念であったことを思い出す。
またアミノグリコシド系抗菌薬投与時にはが起こることがあり、どんな医療機関でも初回問診時に「ご家族や親せきの方で薬によって耳が聞こえなくなった方はいらっしゃいますか?」というアンケートを取るのはアミノグリコシド系抗菌薬の副作用の聴覚障害になりやすいかどうかを知るためのものである。おそらく血中濃度の測定ではこの聴覚障害を防ぐことはできないであろう。日本人では350人に1人といわれるアミノグリコシド系抗菌薬難聴家系の方が難聴になりやすい遺伝子を持っており、遺伝子多型をもった方に起こりやすいことについても解説したい。