年齢によって気管支鏡検査の適応が制限されることはないが,高齢者では心
Restricted mean survival time(RMST)は「ある時点までの生存関数の曲線下面積」に相当する要約指標で,「比例ハザード性」を必要としない解析に用いられる指標の一つである。従来,第Ⅲ相試験では生存期間(PFS やOS)にCox 回帰を用いてハザード比(HR)を推定してきたが,その前提となる「比例ハザード性(観察期間を通じて比較している群間でのHR が一定であるという仮定)」が崩れるケースが近年増えてきた。その背景としては,分子標的治療薬の治療効果などで質的に異なる2 群(特定の遺伝子変異の有無など)や,維持療法などで治療期間が異なる2 群の比較が増えているケースがあること等が挙げられる。
筋虚血を伴ったり,呼吸機能が低下している症例が多いためより慎重に検査前
2011 年以前には,既存の化学療法薬剤を用いた維持療法についての大規模比較試験は,パクリタキセルを用いたGOG175 試験 GOG178 試験 と After-6 試験,トポテカンを用いたAGO-GINECO 試験 とMITO-1 試験 があった。これらの中でGOG178 試験(n=296)のみPFS の改善を認めたが,他の試験ではいずれもPFS,OS ともに改善を認めなかった。2013 年のCochrane review でも,卵巣癌初回治療において,既存の化学療法薬剤を用いた維持療法はPFS,OS をともに改善せず,有害事象の発現頻度は維持療法施行群で有意に高いことが報告された。その後,GOG212 試験として,Ⅲ・Ⅳ期卵巣癌1,157 人を対象に,経過観察群,パクリタキセルによる維持療法を4 週ごとに12 サイクル行う群,ポリグルタミン酸塩パクリタキセルによる維持療法を4 週ごとに12 サイクル行う群の3 群でRCT が行われ,PFS 中央値はそれぞれ13.4 カ月,18.9 カ月(HR 0.78),16.3 カ月(HR 0.85)と化学療法群において延長を認めたが,主要評価項目であるOS は中央値がそれぞれ54.8 カ月,51.3 カ月,60.0 カ月と有意差はなく,グレード 2 以上の有害事象は化学療法群で多いことが報告された。これらの結果から,既存の化学療法薬剤を用いた維持療法は奨められない。
早期癌に対する初回化学療法について,GOG157 試験でTC 療法のサイクル数が検討された。Ⅰc・Ⅱ期,および低分化または明細胞癌のⅠa・Ⅰb 期症例などを対象として,6 サイクルと3 サイクルが比較されたが,前者の5 年再発率の方が約2/3 と低かったものの,統計学的に有意ではなかった。その後,早期癌に対する大規模な2 つのRCT(ICON1,EORTC-ACTION)から,化学療法により生存率が有意に改善されることが示されたが, ,厳密なsurgical staging を行ったサブグループでは予後の改善は認められなかった( 参照)。
[PDF] 術後感染予防抗菌薬適正使用のための実践ガイドライン
これまで,卵巣癌初回治療時にベバシズマブ投与が有用であることを示すRCT が2 つ報告された( 参照)。 GOG218 試験ではベバシズマブをTC 療法と併用後,維持療法として16 サイクル投与された群でPFS の延長を認めた(HR 0.72)が,併用療法のみの群ではPFS の延長を認めなかった。ICON7 試験ではベバシズマブをTC 療法と併用の後,維持療法として12 サイクル投与され,PFS の延長を認めた(HR 0.81)。ベバシズマブに関して,本CQ の内容(完全寛解後の維持療法の有用性)を評価した臨床試験は存在しないが,ICON7 試験では,初回手術後の薬物療法開始時に評価可能病変がなかったのはベバシズマブ群764 例中507 例,コントロール群764 例中501 例であり,かつ,6 カ月時点で増悪が認められたのは両群とも5 %未満であったことから,初回化学療法終了後に完全寛解の 状態で維持療法が行われた症例が多く含まれていたと考えられる。したがって,ベバシズマブをTC 療法と併用後に完全寛解となっている場合に,維持療法としてベバシズマブを用いることは推奨される。なお,ベバシズマブを化学療法と併用のみで用いて維持療法を行わない治療法のエビデンスはなく,また,ベバシズマブを併用せずに化学療法を行った後にベバシズマブ維持療法を行うことは,保険診療上認められておらず,エビデンスもない。
1980 年以降シスプラチンが卵巣癌治療のkey drug となり,1990 年にパクリタキセルが導入されると,GOG111 試験およびOV-10 試験によって2 剤併用療法(パクリタキセル+シスプラチン:TP 療法)が標準治療となった。カルボプラチンはシスプラチンと比較して毒性が低く投与方法も簡便であるため,GOG158 試験およびAGO 試験が行われ,TP 療法とconventional TC 療法(TC 療法)の有効性が同等であることが確認され, ,2004 年のThe 3rd International Ovarian Cancer Consensus Conference を経てTC 療法が世界的に標準療法となった。その後,TC 療法に新規薬剤を加えた大規模試験(GOG182-ICON5)が実施されたが,TC 療法をこえる有効性は認められなかった。
8.グリコペプチド系薬〔VCM/テイコプラニン(TEIC)〕の予防投与 a.適応
2019 年には, BRCA1/2 変異の有無を問わず卵巣癌Ⅲ・Ⅳ期の初回治療例を対象としたPARP 阻害薬投与のRCT として,PAOLA-1 試験(ベバシズマブを含むレジメン後のオラパリブとベバシズマブ併用の維持療法)VELIA/M13-694/GOG3005 試験(TC +ベリパリブ後のベリパリブ維持療法)PRIMA/ENGOT-OV26/GOG3012 試験(プラチナ併用化学療法後のニラパリブ維持療法)の3 試験の結果が報告された。前二者については初回薬物療法の項目に記載した( 参照)。PRIMA 試験はPDS により残存腫瘍が肉眼上認められなくなったⅢ期症例を除外し,かつ,初回化学療法後にCR または最大腫瘍径2 cm 以下のPR となった患者を対象とし,ニラパリブによる維持療法の効果を調べたものである。上記の3 試験は,治験組み入れ時の患者背景や試験デザインが異なるため,HR を単純に比較することはできないが,いずれも主要評価項目であるPARP 阻害薬投与群におけるPFS 延長が認められた(HR はそれぞれ 0.59, 0.68, 0.62).上記のうち、オラパリブと ベバシズマブの併用療法はHRD の症例に対して保険適応となり、ニラパリブはBRCA1/2 変異やHRD の有無に関わらず保険適応となった。
このように,肉眼的に腫瘍が卵巣に限局すると考えられても潜在的な転移病巣がstaging laparotomy で確認されるケースは少なくない。潜在的な転移病巣の検出による正確なステージングの観点から,初回手術で十分なステージングが行われていない場合には,診断的意義において広範囲にわたる検索を目的とした再開腹によるstaging laparotomy を行う。また,staging laparotomy を施行しなかった症例は施行した症例と比較して再発リスクが高く,正確なstaging laparotomy の実施は予後因子の一つである。前方視的RCT の解析からも,術後化学療法を施行していない群ではstaging laparotomy の施行により再発および死亡リスクが有意に低下するほか,不要な化学療法を回避できるため,正確なstaging laparotomy の実施は治療的意義においても重要である。なお,十分なstaging laparotomy を行うことができない場合には,婦人科腫瘍専門医のいる高次医療機関でこれを行うことを推奨する, 。
年齢が 5 歳以下または 50 歳以上,過去 6 ヵ月以内の発症,5 分以
GOG218 試験とICON7 試験では,TC 療法とベバシズマブ同時併用に続くベバシズマブの単剤維持療法が,TC 療法と比較して有意にPFS を改善すると報告された(, 参照), 。ベバシズマブに関して,本CQ の内容(初回化学療法後の残存腫瘍に対する追加治療の有用性の有無)を評価した臨床試験は存在しないが,ICON7 試験では,手術後薬物療法開始時に評価可能病変を有する 症例でのbest response がPR あるいはSD であったのは,ベバシズマブ群257 例中81%,コントロール群263 例中89%であったため,初回化学療法終了時点で腫瘍が残存していた症例が多く含まれていたと考えられる。したがって,初回化学療法時にベバシズマブ併用を行い,化学療法終了時に腫瘍が残存している場合,PD になるまではベバシズマブの単剤維持療法が推奨される。なお,ベバシズマブを化学療法と併用し維持療法を行わない治療法のエビデンスはなく,また,ベバシズマブを併用せずに化学療法を行った後にベバシズマブ維持療法を行うことは,保険診療上認められておらず,エビデンスもない( 参照)。
早期癌においては,術中所見では確認し得ない病巣の存在により,術後の病理組織学的検査において最終的な手術進行期が臨床的診断よりもアップステージされる可能性がある。術前評価,術中所見で上腹部に病巣がないと判断した症例に施行された腹膜生検の7%,大網の2.7%に播種がみられたとの報告がある。肉眼的に病巣が卵巣に限局しても,子宮と卵管に6%,リンパ節に6%,腹膜,大網,癒着部位からの生検組織で17%に顕微鏡的病変がみられ,肉眼的に正常な虫垂への転移は2〜2.8%に認められたとの報告がある。後腹膜リンパ節転移に関しては,pT1 では4.4%,pT2 では17.5%に病理組織学的に転移が確認されアップステージされた報告があり,組織型では,漿液性癌13.5%,類内膜癌2.1〜2.7%,粘液性癌1.7〜3.4%,高異型度の際に転移率が高いという報告, や,卵巣限局の明細胞癌では6%という報告がある。アップステージの根拠となった病巣の部位については,骨盤腹膜,後腹膜リンパ節,卵管および卵管間膜,大網,横隔膜,S 状結腸間膜と広範囲にわたるほか,腹腔細胞診が陽性の場合もある, , , 。再開腹術によりアップステージした組織型は,漿液性癌や明細胞癌で多い。
一方,Grossi らは WHO クラス I または II,6
2019 年のCochrane review では,診断的腹腔鏡下手術によってoptimal surgery の可能性を判断することについて確固たる結論は導けないと結論づけている。一方,2017 年に報告された,初回腫瘍減量手術において1 cm 以上の残存腫瘍(無益な開腹手術)が予想される患者を同定するための診断的腹腔鏡下手術の有用性に関するRCT では,腹腔鏡施行群の無益な開腹手術の割合は10%で,診断的腹腔鏡下手術を行わず開腹手術によるPDS を行った群の39%より有意に低く,生存率には差がない結果であった。以上から,進行癌に対して診断的腹腔鏡下手術を行うことで無益な開腹手術を避け,組織学的検査後に早期に化学療法を施行しIDS を施行する方針をとることができ,初回開腹手術がsuboptimal surgery に終わる症例を低減できるメリットがある。
分間歩行距離 500 m 以上(50 歳未満)または 380 m
進行卵巣癌に対する腹腔鏡下手術については,後方視的研究がいくつかある。限局した転移巣や限られたリンパ節腫大のような進行卵巣癌に対しては,出血量が少なく入院期間も短い結果で,術中合併症には両手術方法で差がなく,術後合併症は腹腔鏡下手術の方が少ない結果であり,症例の選択をすれば,腹腔鏡下debulking surgery は可能としている。しかし,前方視的研究ではないこと,症例数が少ないケースコントロール研究であること,症例の選択方法が定まっていないことからバイアスが大きく,現時点では一般臨床で腹腔鏡下手術を奨めるに足るエビデンスとは言えない。一方,NAC 後のIDS で腹腔鏡による根治手術を行う前方視的試験のMISSION trial では,NAC でCR を得られた52 症例のうち,腹腔鏡検査で腹腔内を観察し,腹腔鏡下IDS が可能と考えられた30 症例では96.6%がcomplete surgery を達成でき,術中の開腹手術への移行はなく,術後2〜3 日で退院したと報告しているが,長期予後への影響については明らかとなっていない。また,6 研究(前方視的研究3,後方視的研究3)の3,231 例(腹腔鏡下手術567 例,開腹手術2,664 例)のメタアナリシスによる検討では,腹腔鏡下手術における術中合併症の発症率は3%で開腹手術との差はなく,術中出血量は70〜107 mL と開腹手術の532 mL より少なく,入院期間は有意に短い結果であった。開腹手術への移行は,0〜16%であった。ほとんどの研究で完全腫瘍摘出手術を完遂するために骨盤外の手術が必要となっていた。Complete surgery は腹腔鏡下手術群の74.5%,開腹術群の53.1%に達成され,両群間に差はなかった。観察期間中央値が32 カ月の時点では再発率に差はなく,以上の結果を踏まえて,進行卵巣癌でNAC 後にCR になったような症例に対して,適切な症例を選択すれば,腹腔鏡下IDS は可能としている。
以上(50 歳以上),右房圧 10 mmHg 以下,心係数 2.5
卵巣癌の進行期分類にはFIGO 分類が用いられ,外科的検索による病理組織学的診断が重要である。卵巣癌Ⅰ期と思われる症例に対する基本術式は単純子宮全摘出術および両側付属器摘出術,大網切除術とされるが,後腹膜リンパ節転移,腹膜播種の有無を確認する進行期決定開腹手術(staging laparotomy)を行い,より詳細・正確な進行期診断が非常に重要である。Staging laparotomy による進行期診断を行うことが,術後化学療法の必要性に影響を及ぼす。術後に化学療法を行っていないⅠa〜Ⅱa 期Grade 1,67 症例の後方視的検討で,再発は不十分なステージングの群からのみの4 例であり,staging laparotomy によって診断が確定した場合は腹腔内細胞診陽性のⅠc 期を除いて化学療法を省略できる可能性が示されている。また,staging laparotomy によって確定したⅠa・Ⅰb 期かつGrade 1, 2 の40 例に対して術後化学療法を施行せずに経過観察した前方視的検討では,再発は明細胞癌の1 例のみであったことから,この報告では明細胞癌以外は術後化学療法が省略できるとしている。前方視的なRCT でも,staging laparotomy で確定したⅠa・Ⅰb 期かつGrade 1, 2 の場合,経過観察群と術後化学療法群で予後に差がなかったことから,このサブグループは術後化学療法を省略できる可能性があるとした。このように,早期卵巣癌においてはstaging laparotomy を行った上で進行期を正確に診断することが重要とされており,どこまで確実にステージングしたかということ自体が再発のリスク因子となる。
対象となる患者の年齢:卵巣癌妊孕性温存手術に関する報告1,3,5,6,9─13,19)の
進行癌症例に対する腫瘍減量手術としての腹腔鏡下手術と開腹手術を比較した報告は少ない。早期卵巣癌に対する腹腔鏡下手術と開腹手術との比較では,修練を積んだ婦人科腫瘍専門医が行えば短期生存率に差がなく,腹腔鏡下手術は,出血量が少なく入院期間も短いという報告がある。一方,2016 年のCochrane review では,経験豊富な婦人科腫瘍専門医が行う場合には,早期卵巣癌に対する腹腔鏡下手術は可能と考えられるが,早期卵巣癌を対象としたRCT やメタアナリシスがない状況や,生存率に関して腹腔鏡下手術が開腹手術よりも劣るとする報告があることなどから,一般診療として腹腔鏡下手術を行うことを推奨できるだけのエビデンスは存在しないと結論づけている。そのほか,後方視的研究であるが,11 研究3,065 例の早期卵巣癌症例(腹腔鏡下手術1,450 例,開腹手術1,615 例)のメタアナリシスでは,腹腔鏡下手術は出血量は少なく,入院期間は短く,術中合併症の発生頻度や程度には両手術方法で差がなく,術後合併症は腹腔鏡下手術の方が少なかった。また,化学療法開始までの期間が5.16 日短くなり,手術操作によるアップステージングや腫瘍破裂は両手術間に差はなく,再発率にも差はないことも示されている。
Kozlowska K, Nunn KP, Rose D, Morris A, Ouvrier RA, Varghese J.
早期卵巣癌における術後化学療法の有効性を検討した2 つの大きなRCT が,ACTION 試験とICON1 試験である。ACTION 試験はⅠa 期,Grade 1 以外のⅠ期症例を術後化学療法群と経過観察群に割り付け,術後化学療法の有効性を検討した第Ⅲ相RCT である。448 名が参加し,staging laparotomy が行われた患者は34%であった。全体としてOS に差はなかったものの,RFS においては術後化学療法群が予後を改善することが示された。特に不十分なステージングで診断された症例においては,RFS, OS ともに化学療法群で有意に改善していた。それに対し,十分なstaging laparotomy がなされた症例においては,術後化学療法の有効性は認められなかった。ICON1 試験は,Ⅰ期症例を対象として,術後化学療法群と経過観察群とにランダム化比較した臨床試験である。477 名が参加し,ステージングが不十分な症例がACTION 試験より多く含まれたが,OS とRFS のいずれにおいても,術後化学療法群が有意差をもって予後を改善した。この2 つの試験を合わせた解析で,5 年生存率は経過観察群74%に対して術後化学療法群は82%であり,術後化学療法群の方が予後良好であった。さらに,ICON1 試験の10 年フォローアップ結果が2014 年に発表された。Ⅰ期の卵巣癌を高リスク群(ⅠA 期 Grade 3,ⅠB〜ⅠC 期 Grade 2 または3,すべての明細胞癌),中リスク群(ⅠA 期 Grade 2,ⅠB 期またはⅠC 期 Grade 1),低リスク群(ⅠA 期 Grade 1)に分類し,高リスク症例においては,RFS, OS いずれにおいても術後化学療法群の方が予後を改善したが,それ以外の患者においては術後化学療法の有効性は認められなかった。2015 年に発表されたCochrane Library のメタアナリシスでは,Ⅰ期の卵巣癌を上記と同様に高・中・低リスク群に分類し,高リスク群では術後化学療法の有効性は認められるものの,中・低リスク群においては有効性が認められなかった。以上のエビデンスから,staging laparotomy によって確定したⅠA 期 Grade 1, 2,ⅠB 期かつGrade 1 の非明細胞癌症例においては,術後化学療法を省略することを提案する。
[PDF] 川崎病心臓血管後遺症の診断と治療に関する ガイドライン
妊孕性温存手術が考慮できる患者の選択にあたっては,正確なステージングが要求される。進行期決定開腹手術に含まれる手技は,肉眼と触診による注意深い観察で正常と確信できる場合にのみ省略を考慮できる。肉眼的に被膜表面への浸潤や被膜破綻,腹膜播種の認められないGrade 1 の卵巣癌症例においては,対側卵巣への顕微鏡的転移は稀とされている, 。卵巣予備能低下および術後癒着による不妊症を避けることを考慮し,肉眼的に正常な対側卵巣生検の省略は許容される。後腹膜リンパ節郭清に関して,組織型が粘液性癌または類内膜癌で骨盤内進展や腹膜播種のない場合には,転移の頻度が少ないことが報告されている, 。また,リンパ節郭清による術後癒着のために妊孕性が低下する可能性があり,転移の確率が低いと臨床的に判断された場合には,生検にとどめることは許容される。一方で,漿液性癌ではリンパ節転移が30%前後と報告されている。また,明細胞癌では数%から30%近くと報告によって頻度の差が大きい。この2 つの組織型では,リンパ節郭清の省略は奨められない。
1) Crook D, Collins AJ, Rose AJ : A comparison of the effect ..
次の臨床的条件も重視する。①患者本人が妊娠への強い希望をもち,妊娠可能な年齢であること,②患者と家族が卵巣癌や妊孕性温存治療,再発の可能性について十分に理解していること,③治療後の長期にわたる厳重な経過観察に同意していること,④婦人科腫瘍に精通した婦人科医による注意深い腹腔内検索や術後の経過観察が可能であること,などである。①については,保存的治療の主目的である妊娠・分娩が見込まれる年齢であることが重要である。②では,術後の病理組織学的診断の結果によっては妊孕性温存不可と判断し,再手術(二期的手術)もあり得ることも十分に説明しておく必要がある。
年齢にかかわらず,新規に発症した頭痛を診断する最初のステップは二次性頭痛を除 ..
一方,ⅠC 期や明細胞癌の取り扱いに関しては,一定の見解が得られていない。術中被膜破綻によるⅠc 期はⅠa・Ⅰb 期と比べて予後に差がないとする報告と,予後因子であるとする報告, がある。また,staging laparotomy で確定し,術後化学療法が施行されたⅠc 期はⅠa・Ⅰb 期と予後に差がないとするメタアナリシスがあるが,ここでも術後化学療法が省略できるかどうかは不明としている。明細胞癌は高悪性度として扱われ,Grade 分類の対象とならないため,一般的には術後化学療法の省略条件とならない。2,325 名の米国National Cancer Database を用いたⅠ期の明細胞癌症例の後方視的解析では術後化学療法により予後を改善したとの報告があるが,米国SEER のデータベースを用いた後方視的解析では,Ⅰ期の明細胞癌に対する術後化学療法の有効性が示されなかった。