の承認は、転帰や症状の改善を喫緊に必要とする慢性心不全患者さんに新たな治療選択肢を


では「心不全の予防とケアを推進しよう!」と題して、心不全が増加している事や心不全に対する予防・治療について概説しました。この記事の後にも、心不全をはじめとする循環器病疾患対策は進み、2019年12月には「脳卒中・循環器病対策基本法」が施行されました。同基本法は脳卒中、心筋梗塞、心不全などの循環器病の予防推進と治療体制の整備を進めることで、人々の健康寿命を延ばし、医療・介護費の負担軽減を図ることを目的としています。同基本法に基づいて2020年10月には「循環器病対策基本計画」(図1)が閣議決定され、今後はこの基本計画に従って、全国で循環器病対策が推進されていくことになります。


心不全治療における SGLT2 阻害薬の適正使用に関する Recommendation ..

循環器病には多くの疾患が含まれますが、心臓の機能がなんらかの障害を受けることで最終的に生じる「心不全」の予防や治療は大きな課題となっています。心不全パンデミックとも言われる中では、いかに心不全を悪化させず、入院治療へ至らずに済むようにできるかが大切になります。予防が重要であることは変わりありませんが、心不全になってしまった場合には、投薬によって状態をコントロールすることも重要です。

実際に糖尿病のない心不全患者さんに導入して低血糖になったことは経験したことがありません。

商品名フォシーガ)など、ここ1~2年の間に慢性心不全の適応を取得した薬剤の推奨が新たに加えられた。 ..

フォシーガ(ダパグリフロジン)は、1日1回経口投与によって使用するファーストインクラスのSGLT2阻害剤です。心臓、腎臓および膵臓の基本的な関連性を背景として、フォシーガでは、研究により、心腎疾患に対する予防と抑制効果、臓器保護効果が示されています。これらの臓器の一つでも損傷を受けると、他の臓器が機能しなくなり、2型糖尿病、心不全、慢性腎臓病といった、全世界の主要な死因となる病気を引き起こす可能性があります。

この慢性的になった心不全に対する経口薬のラインナップは、最近まで20年近く大きな変化がないままに経過してきたのですが、2019年にHCNチャンネル遮断薬であるイバブラジン(商品名:コララン)、2020年にアンジオテンシン受容体・ネプライシン阻害薬(ARNI)のサクビトリルバルサルタン(商品名:エンレスト)とSGLT2阻害薬のダパグリフロジン(商品名:フォシーガ)が新たに心不全の治療薬として保険収載され、心不全治療の実際に大きな変化をもたらしています。

循環器病対策、心不全治療の新たな展開 | 同友会メディカルニュース

DELIVER試験は、2型糖尿病の有無を問わず、左室駆出率が40%超の心不全患者さんの治療として、フォシーガの有効性をプラセボとの比較で評価するようにデザインされた、国際共同、無作為化、二重盲検、並行群間比較、プラセボ対照、イベント主導型第Ⅲ相試験です。フォシーガは、基礎治療[ナトリウム・グルコース共輸送体2(SGLT2)阻害剤の併用を除く、糖尿病や高血圧を含むすべての併存疾患に対する各地域における標準治療]への追加治療として1日1回投与されました。DELIVER試験は、駆出率が40%超の心不全患者さんを対象に実施された最大の臨床試験であり、6,263例の患者さんが実薬群とプラセボ群に 無作為化されました。
主要複合評価項目は、心血管死、心不全による入院、または心不全による緊急受診のいずれかが最初に発生するまでの期間としました。重要な副次評価項目は、心不全イベントおよび心血管死の総数、8カ月時点でのKCCQの総症状スコアのベースラインからの変化量、心血管死までの期間、ならびに原因を問わない死亡までの期間などです。

心不全は慢性かつ長期的な疾患であり、時間の経過とともに悪化します1。全世界で約6,400万人が罹患しており、非常に高い罹患率と死亡率を伴うことが特徴です2,3。慢性心不全は、65歳以上で入院する方の理由として最も多い疾患で、臨床的および経済的に大きな負担となっています4。心不全は多くの場合、心臓が収縮するごとに送り出される血液量の割合の測定値である左室駆出率によって、駆出率低下を伴う心不全(HFrEF)(左室駆出率が40%以下)、駆出率が軽度低下した心不全(HFmrEF)(左室駆出率が41%~49%)、駆出率が保持された心不全(HFpEF)(左室駆出率が50%以上)といったいくつかの種類に分類されます5。心不全患者さんの約半数はHFmrEFまたはHFpEFで、予後を改善する薬物治療の選択肢がほとんどないのが現状です5,6

1) 日本循環器学会/日本心不全学会:急性・慢性心不全診療ガイドライン(2017 年改訂版) ..

この変化は心不全の日常診療に直結し重要な内容であったことから、日本循環器学会(JCS)と日本心不全学会(JHFS)が2018年3月に合同で発表した「急性・慢性心不全診療ガイドライン(2017年改訂版)」を次回の改定を待つことなく「2021年JCS/JHFSガイドライン フォーカスアップデート版 急性・慢性心不全診療」として発表するに至っています。このガイドラインに示されている心不全治療のアルゴリズムを図2に示します。薬物治療の中で基本薬に加えてARNIへの切り替えやSGLT2の追加が示され、併用薬の中にはイバブラジンも入りました。

ケアネットでは、毎回1つの疾患にフォーカスし、診断・治療の基本や最新情報、ガイドラインなどを編集部が、まとめて紹介。専門外の疾患がわかりやすいと評判です。


心不全TOPICS#37 心不全治療におけるSGLT2阻害薬の ..

これらは、上記のDELIVER試験の結果に基づき変更されました。今回の電子添文の改訂により、フォシーガは左室駆出率を問わず慢性心不全患者の治療薬として使用いただけるようになりました。

SSy2-2慢性心不全・腎臓病の新展開 ~フォシーガに対する期待~

アストラゼネカ株式会社(本社:大阪市北区、代表取締役社長:堀井 貴史、以下、アストラゼネカ)と小野薬品工業株式会社(本社:大阪市中央区、代表取締役社長:相良 暁)は、アストラゼネカの選択的SGLT2阻害剤「フォシーガ®錠5mg、10mg(一般名:ダパグリフロジンプロピレングリコール水和物、以下、フォシーガ)」について、既承認の慢性心不全の「効能又は効果に関連する注意」に記載の「左室駆出率」に関する記載を削除、およびそれに関連する情報を追記し、日本における電子化された添付文書(以下、電子添文)を改訂したことをお知らせします。

Butt JHらは, 症候性心不全患者を対象に, SGLT-2阻害薬のダパグリフロジン(商品名 フォシーガ®) の ..

また、非薬物治療の中にある経皮的僧帽弁接合不全修復術は、僧帽弁という心臓の弁が逆流してしまう状態をカテーテル治療で治す方法になります。心不全では心臓が大きくなるために、弁が引き延ばされてしまう等により弁がきちんと閉まらなくなることで血液の逆流が生じ、そのことがさらに心不全を悪くしてしまうことがあります。経皮的僧帽弁接合不全修復術では、開胸術に比べて負担の少ないカテーテル治療で弁の逆流を治すことができ、COAPT試験という研究では心不全による入院を薬物治療に比べて47%減少したという結果も出ています。日本では2018年4月に保険適応となり、心機能が低下して重症な僧帽弁逆流がある方には、このような非薬物療法も検討していく必要があります。

心不全に対するSGLT2阻害薬の使い方についてまとめてみた 2023.12

- 左室駆出率にかかわらず慢性心不全の治療薬として使用可能に -

国内の急性・慢性心不全診療ガイドラインでは、心不全の薬物治療法として、 ..

アストラゼネカは「フォシーガ錠5mg、10mg(一般名:ダパグリフロジンプロピレングリコール水和物、以下フォシーガ)」の添付文書が改訂されたことを機に、「慢性心不全治療に残された課題と選択的SGLT2阻害剤フォシーガが果たす役割」と題して、2023年3月2日にメディアセミナーを開催した。

セミナーでは、はじめに阪和病院・阪和記念病院 統括院長・総長 北風 政史氏より、「慢性心不全治療の現状とDELIVER試験を踏まえた今後の展望」について語られた。

日本では、主な死因別死亡において心疾患による死亡率が年々増加しており、2021年では14.9%と、がん(26.5%)に次いで多かった。心疾患の中でも心不全は5年生存率が50%と予後が不良な疾患であることが知られている。

心不全は左室駆出率(LVEF)の値によって、3つの病態(HFrEF:LVEF40%未満、HFmrEF:LVEF40%以上50%未満、HFpEF:LVEF50%以上)に分類されるが、これまで治療法が確立されていたのはHFrEFのみであった。しかし、このたびDELIVER試験により、フォシーガがLVEFにかかわらず予後を改善するという結果が示され、添付文書が改訂された。

・幅広い層を対象にしている
組み入れ時にLVEF40%を超える患者(組み入れ前にLVEF40%以下であった患者も含む)を対象とした。
・投与開始後早い時点で有効性が示された
主要評価項目である主要複合エンドポイント(心血管死、心不全による入院、心不全による緊急受診)のうち、いずれかの初回発現までの期間は、フォシーガ10mg群でプラセボ群と比較して有意に低下し、この有意なリスク低下は投与13日目から認められた。
・LVEFの値によらず有効性が認められた
全体集団とLVEF60%未満群で、主要複合エンドポイントのうちいずれかの初回発現までの期間を比較したところ、フォシーガ群におけるリスク低下効果が同等であった。この結果から、LVEF60%以上の心不全患者にもフォシーガが有効であることが示唆された。

現在、HFpEFの薬物療法におけるSGLT2阻害薬の位置付けは、海外のガイドラインではIIa、国内ではガイドラインへの記載はない。しかし、DELIVER試験などでHFpEF治療におけるSGLT2阻害薬の知見が蓄積された今、ガイドラインによる位置付けが変更される可能性がある。

続いて矢島 利高氏(アストラゼネカ メディカル本部 循環器・腎・代謝疾患領域統括部 部門長)より「慢性心不全領域におけるダパグリフロジンの臨床試験プログラム」について語られた。

矢島氏はDAPA-HF試験とDAPA-HF/DELIVER試験の統合解析結果について解説し、DAPA-HF/DELIVER試験の統合解析によれば、LVEFの値によってフォシーガの有効性に差はないことが示されていると述べた。

今回、フォシーガの効能または効果に関する注意が、LVEFによらない慢性心不全に変更されたことで、今後、慢性心不全治療がどのように変化していくか注視したい。

■参考文献
1)
2)
3)
本試験はAstraZenecaの資金提供を受けた
4)
本試験はAstraZenecaの資金提供を受けた
5)
6)
本論文作成に当たっては、AstraZenecaの資金提供を受けた

害薬(販売名フォシーガ錠)が心不全治療薬として承認を取得している。

この様に、心不全治療に新たな展開が起きていますが、基本は心不全にならないように予防していくことが大切です。喫煙や肥満対策はもちろんですが、健診による早期発見と危険因子の早期治療を行い、心疾患の最終形ともいえる心不全を防いでいきましょう。