本研究の目的は、高齢者の日常生活における光曝露と内因性メラトニン分泌量が ..


2つ目は、メラトニンが日中に抑制されていると、夜間のメラトニンの分泌量が増えます。不眠で悩んでいる高齢の方に対して光を日中に照射すると、健康な高齢者以上にメラトニンが分泌されます。


1.血管抵抗の増大 2.消化管の運動の亢進 3.水晶体の弾性の増大 4.メラトニン分泌量の増加.

このように、高齢者では睡眠の質の変化、体内時計のずれなど、不眠や早朝覚醒を起こしやすい下地があります。しかし、それだけで睡眠障害が起こるわけではありません。「それに加えて睡眠障害のリスクを高めるのは日頃の生活習慣です」(井上先生)。
例えば早朝の散歩。高齢者は、健康に良いからとよく早朝に散歩をします。しかし、実は朝早くから光を大量に浴びることで、体内時計はどんどん前倒しにリセットされていきます。その結果、夜は早くから眠くなり、朝はますます早く目覚めるという悪循環に陥ることもあるのです。井上先生は「生活パターンが乱れ、夜型に傾いているような若い人なら、朝活はお勧めです。しかし、高齢者では、早朝覚醒を防ぐため、極端な早朝活動は控えるのが賢明です」と注意を促します。
また、何もすることがないからと、眠くないのに早く床に入るのも考えもの。「眠らなければ」という意識が強く働き、かえって目がさえて眠れなくなるというパターンに陥りがちです。
高齢者では、こうした生活習慣に加えて、服用している薬の副作用が、睡眠障害を引き起こすこともあります。代表的なものとして、自律神経・中枢神経系に作用する薬やステロイド薬、降圧薬(β遮断薬、Ca拮抗薬)などが挙げられます。さらに、うつ病、自律神経失調症、不安障害、むずむず足症候群、睡眠時無呼吸症候群などの病気が原因で不眠になるケースも少なくないといいます。井上先生は「睡眠障害には薬や病気が関与していることが多いので、眠りに不安のある方は、かかりつけの医師や薬剤師に相談してみることも大事」とアドバイスします。

『メラトニン』は、私たちの体内で合成されるホルモンの一つで、一般に「体内時計」と呼ばれている〝体のリズム〟を整える働きをしています。人だけでなく、すべての脊椎動物の体内で分泌されている物質で、特に、睡眠と覚醒に影響を与えていることで知られています。
メラトニンの血中濃度は夜間になると上昇し、これが、人が「休息をとる」「睡眠をとる」というシグナルになります。ちなみに、夜行性の動物にとっては「活動を始める」というシグナルとして伝わっているそうです。
さらに、近年の研究でメラトニンには『抗酸化作用』があることもわかってきました。人の体内で起こる酸化は、「活性酸素」の悪影響によって体が錆びているような状態になり、がんや生活習慣病などの原因となってしまう状態です。抗酸化作用は、この活性酸素を抑えてがんの予防や生活習慣病の改善を促す働きで、美容に着目したエイジング対策としても期待できるものです。

メラトニン分泌量と筋力の関連:高齢者の大規模コホート研究(平城京スタディ)横断解析

人間が睡眠を取る理由は体力の回復にあります。しかし、体力の低下や仕事がないことで日中に活動量が低下していれば、そもそも疲れていないため体力もあり余っています。

そもそも、眠れなくなってしまう原因とはどのようなものなのでしょうか?いくつかの原因が考えられますが、なかには高齢者特有のものもあります。

うつ症状は老年期うつ尺度を用いて評価し、主観的な睡眠の質の評価には ..

しかし、実は加齢によってメラトニンの分泌量は低下していくこともわかっています。
1歳~3歳頃までが最も多く、思春期以降は減少に転じ、70歳を超えるとピーク時の10分の1以下になるという報告があります。0歳の赤ちゃんが夜泣きをする理由の一つとして、メラトニンの分泌量がまだ不安定な時期だからと言われたり、一方で、高齢者が夜眠れずに昼夜逆転するケースが起こるのは、メラトニンの昼夜の分泌量に差がなくなってくることも一因と考えられたりしています。
このように、メラトニンは加齢とそれに伴う睡眠の問題に深く関係しています。「しっかり睡眠時間が確保できない」「眠りの浅い状態が続く」など、一般に『睡眠障害』と呼ばれているものは、認知症と密接に関わっていることもわかっています。
加齢に伴うメラトニンの減少が睡眠障害を誘発し、それが認知症にも繋がっているとするなら、メラトニンの分泌量低下の予防は認知症予防にも貢献する……という考え方ができるかもしれません。

ほとんどのホルモンの血中濃度は加齢とともに低下するが、高齢になっても同程度の濃度が保たれるホルモンや、より増加するホルモンもある。ホルモン濃度が下がらなくても、年齢を重ねるとホルモン受容体の感受性が低下するため、内分泌機能は全般的に低下する。

ン分泌量と術後 3 週間時点のメラトニン分泌量を、唾液メラトニンで比較した。

現在、日本人の40~59歳では約5人に1人が、60歳以上では約3人に1人が、何らかの睡眠障害を抱えているそうです。確かに、夜型の現代社会は、コンビニや飲食店などの「24時間営業」は当然という時代に突入しており、街には深夜まで煌々と灯りがともっています。また、就寝直前までテレビやパソコンに触れ、ベッドに入ってからもスマートフォンを見ている人は多いようです。
先述のとおり、メラトニンの分泌は、夜になってから=太陽光がなくなってから始まります。自然の流れでは太陽が沈んでいる時間帯なのに、蛍光灯やブルーライトといった人工的な光を断続的に浴びることにより、体のリズムが乱れることは、想像に難くありません。
このことが原因でおこる不眠症は、体内時計がずれる「リズム障害」とも言われています。現代では10代~20代の若い世代にも当然起こりうる不眠障害・リズム障害ですが、メラトニンの分泌量が激減している50代以降の中高年の方々には、少しでも回避したい問題であり、質の良い睡眠をとるための重要なポイントです。

このメラトニンは一生の間で分泌量が変化します。10歳までをピークに加齢によって分泌量がどんどん下がっていきます。50~60歳台になると、ピーク1/10以下になってしまいます。このため、睡眠の質が落ちてしまい、朝早くに目が覚めるようになります。


女性のライフステージごとのエストロゲン分泌量と老年期に起こりやすい病態.

高齢者で睡眠障害が起こりやすい要因として、体内時計の微妙なズレも指摘されています。
人間には、ほぼ1日周期でリズムを刻む体内時計が備わっており、意識しなくても、昼間は心と身体が活動状態に、夜になると休息に切り替わります。私たちが夜、自然に眠りへと導かれるのは、この体内時計の働きによるものです。
体内時計は約25時間周期と考えられています。人間は地球の自転に合わせて24時間周期で社会生活を送っています。よって、毎日1時間ほど体内時計はずれますが、朝起きて、日光を浴びたり、運動することでうまく調整されています。この1日周期のリズムを概日(がいじつ)リズムと呼びます。自然のリズムですが、井上先生によると、高齢者の場合、体内時計が前倒しにずれたり、リズムの振幅が小さくなって、これらによる睡眠障害を起こしやすい傾向があるといいます(図2)。
「若い人でも、深夜の残業、夜更かし、運動不足など生活習慣の乱れが続くと、体内時計に狂いが生じます。高齢者の場合、加齢による生理的な変化と生活習慣の影響が重なって、体内時計が少し前に進みがちです。早朝に目が覚めたり、夜、早く眠くなったりするのはこのためで、それによって不眠などの障害が起こりやすくなります」(井上先生)。
ではなぜ、体内時計に微妙な狂いが生じるのでしょうか。そのカギを握るのが、脳の松果体(しょうかたい)と呼ばれる部分から分泌される「メラトニン」というホルモンです。 メラトニンは体内時計に作用して、自然な眠りを誘う働きがあります。私たちが夜、眠くなるのは、このメラトニンが活発に分泌されるためです。ところが最近の海外の研究で、高齢者ではメラトニンの分泌量が減少することが明らかにされています。井上先生は「メラトニンの減少が睡眠・覚醒のリズムを乱して、それが、眠りの浅さ、早朝覚醒など高齢者の睡眠障害に関係すると考えられます」と説明しています。

○メラトニン作動薬高齢者ではメラトニンの分泌量が減少する。 ..

では、高齢者が健康な睡眠を守り“快眠ライフ”を送るためには、どのような工夫が必要なのか。井上先生にいくつかポイントを挙げていただきました(表)。
① 8時間睡眠にはこだわらない
1日8時間の睡眠が必要と考えている高齢者が多いようですが、実際に日本人の睡眠時間は平均約7時間、高齢者では6時間程度です。適切な睡眠時間には個人差があり、季節によっても変動します。したがって、何時間という数字にこだわらないことが大切です。
② 眠くなってから床に就く
眠くないのに無理に眠ろうとする、それがストレスになり、かえって眠れなくなります。眠くなるのを待って、寝床に入るようにします。
③ 起きる時間を一定にする
寝不足気味のことがあっても、起きるのは毎朝、同じ時間にします。三度の食事も決めた時間にとるようにして、規則正しい生活習慣を身につけましょう。
④ 昼間はしっかり活動性を上げる
朝は日光を取り入れ体内時計を調節します。そして、昼間の活動性を高め、散歩や運動などで太陽の光を十分浴びるようにします。 井上先生は「高齢者の中でも、アクティブな生活を送っている人は、概して睡眠障害になりにくいことが分かっています。家に閉じ込もらず、できるだけ外に出て、活発に活動することが、健康な睡眠を守る知恵」と話しています。

また、メラトニンの分泌量は年齢とともに減少し、更年期の症状やホルモンバランス ..

人はなぜ眠るのか。古くて新しい疑問ですが、まだ明確な答えは出ていません。ただ、はっきりしているのは、脳を休ませ、身体の疲れをとり、心身の機能を回復させる上で、睡眠は欠かせないということです。
この大事な睡眠に、何らかの支障をきたし日常生活に影響が及んでいる状態を「睡眠障害」といいます。「布団に入ってもなかなか寝つけない」「眠りが浅い」「一晩に何回も目が覚める」「朝の寝ざめが早い」などがよくみられる症状です。
こうした睡眠障害は若い人にもみられますが、高齢になるほど頻度が高くなります。井上先生はその一因として「加齢による睡眠の質の変化」を挙げます。
睡眠には「レム睡眠」と「ノンレム睡眠」の2種類があります。レム睡眠は、身体の力は抜けているものの脳は活動している浅い眠りです。一方、ノンレム睡眠は脳の活動が低下している眠りで、3段階に分けられます。入眠後は第1段階から2、3段階へと、徐々に浅い眠りから深い眠りへと移っていきます。睡眠中は、このレム睡眠とノンレム睡眠が一定の周期で、一晩に4〜5回繰り返します。井上先生は「ノンレム睡眠の第3段階は熟睡状態といえます。ところが高齢者では、この第3段階が減り、特に70歳以上になると、ほとんど消失していることが多くなります。これは、加齢による老化現象で睡眠の質が変わり、眠りが浅く、しかも分断されがちになっているためです(図1)。これ自体は生理的な変化ですので、すぐに中途覚醒や早朝覚醒などの睡眠障害が起こりやすくなっているといえるでしょう」と説明します。

皮膚刺激によるメラトニン分泌促進作用の神経性機序の解明と高齢者の睡眠ケアへの応用 ..

このサイクルをコントロールするメラトニンというホルモンの分泌量が、高齢期になると減るという研究結果があり、そのためと考えられています。

メラトニンの分泌量は年齢とともに減少します。特に高齢者では、分泌量が著しく低下し、不眠や浅い眠りの原因となります。 3

大切なことは、その原因をちゃんと理解して、睡眠に対する心構えをつくることです。ここでは、高齢者の睡眠の特徴をご紹介し、その対策をお伝えしたいと思います。そして、睡眠に対する考え方をいっしょに考えていきましょう。

認知症予防やエイジング対策に期待?『メラトニン』の分泌を促そう

ストレスや疲労がたまると、「幸せホルモン」と呼ばれるセロトニンというホルモンの分泌量が低下してしまいます。このホルモンは上述したメラトニンの原料となるホルモンです。

筋肉量減少・筋力低下→サルコペニア; 関節可動域の減少; 変形性関節症; ADL能力の低下

高齢の世代になると病気の発症が増えること、そして、生活の変化に対する不安が、眠りに影響することが考えられています。

[PDF] 高齢者における睡眠障害と認知機能および睡眠改善技術

高齢者の不眠の間接的な要因としては、①持病(関節痛、認知症、うつ病)、②頻尿(ひんにょう)、③睡眠時無呼吸症候群(すいみんじむこきゅうしょうこうぐん)、④薬の服用(降圧剤:こうあつざい、利尿剤:りにょうざい、喘息薬:ぜんそくやく)、などがあります。

[PDF] 高齢者の睡眠の質、身体活動量、糖化ストレス:有隣研究

メラトニンは光と密接に関係しています。高齢の方は、メラトニンを分泌する力が落ちてしまいます。ですが、日中にしっかりと光を浴びることで、健康な高齢者よりもメラトニンの分泌量が大きく増加されていることが示されています。

活動量については、雪国の高齢者の冬季の活動量は他の季節に比較し減少す ..

健康を保つために睡眠はとても大切です。充実した睡眠は、心身の疲労を回復させるだけでなく、記憶を定着させたり、免疫機能を強化する役目も果たしています。しかし、高齢になると、夜眠れない、眠りが浅い、朝早く目が覚めてしまうといった症状を訴える方が増えてきます。高齢者では、なぜ睡眠のトラブルが起こりやすいのか。その原因と対策について、東京医科大学睡眠学講座教授で、医療法人社団絹和会 睡眠総合ケアクリニック代々木 理事長の井上雄一先生にお聞きしました。