デキサメタゾン抑制試験では、合成糖質コルチコイドであるデキサメタゾン(DEX)を少量
薬であるデキサメタゾンの構造は天然のコルチゾールの構造と非常によく似ている。このことにより、デキサメタゾンは糖質コルチコイド受容体にぴったりと結合し、同じように体内の炎症を解消する遺伝子発現の変化を引き起こす。この活性のため、デキサメタゾンはCOVID-19の治療において特に効果的である。なぜなら、コロナウイルスによる損傷はウイルス自体によるものだけではなく、制御できない炎症によるものでもあるからである。ところが、デキサメタゾンの抗炎症効果は、使い方や時期を誤ると害をおよぼしかねない。COVID-19の初期段階において、身体はウイルスを撃退するために免疫系を動員する必要があるので、初期の重症ではない患者にデキサメタゾンを使うと、うかつにも患者の状態を悪化させてしまうかもしれない。
デキサメタゾンは合成副腎皮質ホルモンで、天然の糖質コルチコイドと同じ機序により抗炎症作用を発
糖質コルチコイドは、(estrogen receptor)とともに核内受容体の仲間(ファミリー)に属している。これはリガンド結合ドメイン(ligand-binding domain)、DNA結合ドメイン(DNA-binding domain)、トランス活性化ドメイン(transactivation domain)という3つの部分で構成されている。ヒトの場合、この受容体のリガンドとして最もよくあるのがストレスホルモンの一つコルチゾール(cortisol)である。受容体がコルチゾールに結合すると、受容体の構造が変化し細胞質から核へと移動する。核内では、標的DNA配列に結合し遺伝子発現に影響を与えることができる。糖質コルチコイド受容体は活性化補助因子(coactivator)とも相互作用し、遺伝子発現のしくみをさらに調整することができる。受容体は柔軟なリンカーでつながれたいくつかのドメインで構成されているので、ドメインの構造は別々に決定された。デキサメタゾンに結合したリガンド結合ドメインの構造はPDBエントリー、DNAに結合したDNA結合ドメインの構造はPDBエントリーのものを示す。トランス活性化ドメインはここに示していない。これらのドメインがすべて一緒になり、コルチゾールの結合によって引き起こされる最初のメッセージが伝達される。
糖質コルチコイド(Glucocorticoid、グルココルチコイド)の薬は炎症や自己免疫疾患を治療するため広く処方されており、最近ではCOVID-19(SARSコロナウイルス2型感染症)の重症患者の治療にも用いられている。COVID-19は、発熱や息切れなどの症状から、多臓器不全などの重い合併症への急速に進行する。重症患者は「サイトカインストーム」(cytokine storm)を経験するが、このときにはもはやコロナウイルスに対する炎症反応を抑えることはできず、サイトカイン(炎症の分子メッセンジャー)の異常な産生がさらなる合併症を引き起こしてしまう。臨床試験では、糖質コルチコイド受容体に結合する強力な抗炎症薬であるデキサメタゾン(dexamethasone)を低用量で投与することにより、COVID-19入院患者の死亡率が低下したことが示されている。
コルチコイド欠乏状態に応じて維持療法を行う。 肥満、インスリン抵抗性の観点より、糖質コルチコイド製剤はデキサメタゾンより
糖質コルチコイド製剤の適応症は副腎不全や関節リウマチ、膠原病、悪性腫瘍、皮膚疾患、重症感染症など。2020年7月には、糖質コルチコイドを重症COVID-19患者に使うことが厚生労働省によって認定された。認定されたのは、コルチゾールをより強力化した、合成ステロイドのデキサメタゾンを使った医薬品。デカドロン(日医工)、デキサート(富士製薬工業)が使われている。肺障害や多臓器不全につながる全身性炎症に対して、予防あるいは抑制効果を見込んだもので、英国での臨床試験を基にした決定だ。
デキサメタゾンが結合した構造(左、PDBエントリー)とコルチゾールが結合した構造(右、PDBエントリー)の両方についてリガンド結合ドメインの構造が得られている。これらのリガンドは構造が非常によく似ていて、糖質コルチコイド受容体の同じ窪みに結合する。リガンドは原子種ごとに色分けした球で、糖質コルチコイド受容体は緑のリボンモデルで示している。これらの構造をより詳しく見るため、図の下のボタンをクリックし対話的操作のできる図に切り替えてみて欲しい。
コルチコイドであるデキサメタゾンが、不十分な環境下での早産のリスクが ..
副腎で産生されるステロイドホルモンの総称。大別すると糖質コルチコイドと鉱質コルチコイドに分けられ、具体的な分子種は生物種によって変わる。ヒトでは主に、糖質コルチコイドとしてコルチゾール、鉱質コルチコイドとしてアルドステロンを産生する。特に糖質コルチコイドは医薬品として使われるケースが多い。2020年には糖質コルチコイド製剤のデキサメタゾンが、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の治療薬として認められた。
グルココルチコイドは、プラセボ(ダミー治療)と比較して、2時間後のクループの症状を軽減し、入院期間を短縮し、再診率や(再)入院率を低下させるというエビデンスに変わりはない。デキサメタゾンの0.15mg/kgの少量投与は、標準用量である0.60mg/kgと同等の効果が期待できる。クループに対する低用量デキサメタゾン0.15mg/kgの有効性に関するエビデンスを強化するために、さらなる研究が必要である。小児のクループの治療にはグルココルチコイドが有効であると結論づけた。
コルチコイド作用(ミネラルコルチコイド作用)として水・電解質代
デキサメタゾンはプレドニゾロンと比較して、病院や救急外来を受診してから2時間後と6時間後のクループスコアに改善を認めず、おそらくクループによる再診や(再)入院をほぼ半分に減少させた。グルココルチコイドの追加投与は、プレドニゾロンと比較してデキサメタゾンが有利であった。デキサメタゾン0.15 mg/kgと比較して、標準用量である0.60 mg/kgは,病院または救急部受診後24時間におけるクループスコアリングスケールで評価したクループの重症度をおそらく低下させた.しかし、2時間、6時間、12時間後のクループスコアリングスケール、小児の再診や(再)入院、病院や救急外来での滞在時間については、群間で重要な差を見出すことはできなかった。エピネフリンなどの他の薬剤の使用、グルココルチコイドの補充、呼吸を助けるためのチューブの使用などの追加治療の必要性は、デキサメタゾン0.15mg/kgと0.60mg/kgで差はなかった。新たに組み入れられた試験では、グルココルチコイドの使用による重篤な有害事象は報告されていない。
1964年から2021年までに発表された0歳から18歳の子ども5,888人を対象とした45件の研究に対し、1,323人の子どもを対象とした2件の新しい研究を含めた。今回使用されたグルココルチコイドは、ブデソニド、デキサメタゾン、プレドニゾロンの3種類である。最新の1件の研究では、ブデソニドとデキサメタゾンの有効性が比較された。もう1件の新しい研究では、デキサメタゾンとプレドニゾロンの有効性、およびデキサメタゾンの少量投与(0.15mg/kg)とデキサメタゾン0.60mg/kgとを比較した。デキサメタゾンの投与量を比較した新しい研究のデータを、同じ比較を行った以前からレビューに含まれている研究に追加した。